装幀家 奥定泰之さん
思潮社 総編集長 髙木真之さん
装幀家の奥定さんに招かれて、高木総編集長と
早稲田大学で「未来の書物」についての
講義に参加しました。
装幀家奥定さんを中心に、編集長、詩人の三人で
『まどろみの島』の生成過程についてトーク。
聴講生のみなさんは、もの書き、編集者などを
目指されている学生さんがメイン。
ぼくは、視覚詩人・高橋昭八郎の傑作『あ・いの国』、
田村隆一『死語』初版の装幀について話しました。
1972年制作ポエムアニメーション『あ・いの国』は、
高橋氏自身が書いたオリジナルの詩句は一行もない、
広辞苑や既成の語彙のみを用いた
北園克衛直伝のレディメイドを忠実に守ったもの。
封入された三角形のフラグメントは、
独自の折り加工が施されており、
いったん開いたら、同じように閉じるのがむずかしい、
開かれていると同時に閉ざされてもいる。
やっかいにして不思議な魅力をもつポエジー。
でも、それが「詩」の本質かも。
二時間に及んだ講義でしたが、
50名近くの学生の皆さんが居残ってくださり、
「詩人との編集のやりとりはどんなふうに?」
「詩書の装幀は、通常とちがうはず。
三者はどうコミュニケーションを?」など、
講義内容をしっかり聴きとどけてくださった
熱心なご質問をいただきました。
そのあと、装幀家の誘いで
早稲田の中華の名店「太公望」で打ち上げ。
香港名物の卵蒸し。
日本の茶碗蒸しの源流を感じさせつつ、
中華スープの味わいが美味。
ぼくらは深夜ちかくまで、
詩と本、文学をめぐって番外トークに。
早稲田らしい夜でした。
ぼくはそのまま神保町の「庭のホテル」に投宿。
翌日は仕事の打ち合わせの後、神保町を散策しました。
朝の神田教会。
ヨーロッパが懐かしくなると立ち寄ります。
田村書店に立ち寄り、
田村隆一の『言葉のない世界』初版本(昭森社)や
『鮎川信夫編 森川義信詩集』(母岩社)など
荒地派グループの稀覯本を購入。
いま、某出版社より依頼されて書き進めている
日本の現代詩史についての本の資料です。
神田の老舗ビアホール「ランチョン」で、
吉田健一考案の「ビーフパイ」と
(ビーフシチュウをパイでくるんで焼いたもの。
吉田健一はイギリス留学時代、
村のパブでシチュウを肴にビールを吞んだ思い出から考案)
昼から黒ビールを吞みつつ、
改めて『言葉のない世界』の詩と装幀に感動。
仕事の泊まり、ではなく、
贅沢な休日をいただいた気分でした。