2015年1月30日金曜日

雪とカレー


    

   早朝に原稿を書こうと、書斎の窓をあけたら、白い世界。視界を静かに雪が降り、風に流れてゆくので、わくわくしてペンが進まない。さっさとあきらめて、ここぞとばかり、雪見酒。三杯目には興がのって、ベランダに積もった雪で、雪割りのウィスキーを呑んだ。これが埼玉の雪の味、か。
   午前は神保町で打ち合わせ。寒いときにはカレーにかぎる。そうだ、大好きな共栄堂のスマトラカレーにしよう。カレー屋の多い神保町だが、共栄堂は大正13年創業の老舗。いつも食べるタンカレーがないので、ポークを「ダブル」で注文。共栄堂の場合、ダブルとは、ライスとルーを両方大盛りという意味です。
    酒を嗜まない詩人の鮎川信夫は、「ライスカレー」を好んだらしい。この共栄堂のスマトラカレーも、詩人のエッセイに登場する。というわけで早めのお昼は、カレー、なう。

2015年1月28日水曜日

詩誌「孔雀船」に詩が掲載


    詩人の望月苑巳さんが編集・刊行人の詩誌『孔雀船』85号に、詩が掲載されました。タイトルは「失聴」、今冬に刊行予定の新詩集に収録する長詩。連作詩「耳の笹舟」は、国内掲載はこれが最後。あとは海外の文芸誌に数篇が発表され、詩集を編む作業に入る。
  『孔雀船』は内容、誌面ともに非常に充実しており、個人刊行のポエトリーマガジンの範疇を超えた、本格的で豪華なつくりになっていると思う。そして、もちろん、伊良子清白の同名の詩集が頭をよぎる。望月氏の熱意が感じられる素晴らしい詩誌に、発表の機会を得たことは嬉しく、光栄だった。

2015年1月26日月曜日

『高岡修句集』を読む


   鹿児島の詩人・俳人、ご存知、高岡修さんから現代俳句文庫『高岡修句集』(ふらんす堂)が届く。久しぶりにいい句集を読んだ、そんな余韻のうちに手もとに置いて、読み返している。
   詩や小説を読みあぐねたとき、どうしても俳句に浸ることが多い。いみじくも、高岡さんはこの文庫に収録されたエッセイ「俳句における言語論(抄)」の冒頭で「俳句は、書かないという意志において書く文学行為である。」と喝破されていて、見事な定義だと思う。解説は高岡さんと懇意にされているという、小説家の藤沢周氏。意外な、それでいて藤沢氏らしい切り口で高岡俳句を論じておられた。論考というものの面白さを改めて味わう。
   蕉翁の俳諧にもたびたび立ち戻るが、ぼくの俳句の愉しみ方はきわめて
個人的で、わがままなものだ。とくに近代以降の俳句、高岡さんも追求されている自由律俳句は、孤独の文学だと思っている。パーソナルな声を楽しむものであり、晩酌のとき、独りになるために酒器を傾けながら読むのを無上の愉しみにしている。わずか17音の器から溢れる、広大な思索の世界にこころを馳せる。俳句はほんとうに不思議な文学で、限定され、圧縮されているからこそ、読者は詩や小説よりも自由に思索と空想の羽をのばすことができるのだ。
    とても好みな一句を見つけた。

    春亡ぶグラスに海を少し容れ

そして終盤へと読み進め、
 
   白鳥を裂いて取り出す白い闇

   盃をおき、文庫からふと目をあげる。テレビでは「イスラム国」の人質となった湯川氏が殺害された、との報道。

2015年1月21日水曜日

父のジャズレコード





   療養中の父がTEACのレコードプレーヤーを購入。かつて買い集めたLPレコードをジャズを中心に時々聴いている。そのほとんどが、3、40年前のものだが、音質も問題なく楽しめる。
   写真はご存知、スタン・ゲッツとアストラッド・ジルベルトの『デラックス』。いわずもがなの名盤だ。レコードの音はやわらかくも澄んでいて、ぼくもときどきご相伴にあずかっている。ジャケットもきれいで、とても40年前のLPとはおもえない。ポートレイトも大判で豪華だし、やっぱりCDよりいいですよね。値段は2,000円とあり、当時は希少だった輸入盤は銀座の山野楽器で買えたそうな。
   当時の2,000円というと、いまの一万円ぐらいの金銭感覚。10日近く喫茶店にいくのを我慢して買ったのだとか。ほかにマイルスの『クールの誕生日』や、クリフォード・ブラウンの『スタディー・イン・ブラウン』などの初盤プレスがあった。
   ここ2年間で取り組んできた連作詩「耳の笹舟」は今年の冬に詩集にまとまる予定だが、新連作詩として「Asian Dream」をすでに発表したばかり。1991年に勃発した湾岸戦争下のアメリカが舞台で、ぼくがそのころ聴いていた89〜92年のジャズがかかわってくる。ここ30年の世界史における大きな転回点であり、いまの安部政権へも直結している、湾岸戦争。「イスラム国」に誘拐、監禁されている邦人2名が無事解放、帰還されることを、祈らざるをえない日々だ。

2015年1月20日火曜日

赤阪友昭、語り部としての写真






   1/20、新月の夜。東京は南青山、根津美術館のすぐそばにある「ヘイデンブックス」で開催された、写真家赤阪友昭さんのイベントに参加。ゲストでお招ばれした。
   毎新月の夜に、ホストの赤阪さんがスライドとトークで旅の写真を披露するイベント。今回はモンゴルのトゥバ族をはじめとする遊牧民の暮らしがテーマだった。
   雑誌『Coyote』で活躍する赤阪さんは、現地の人々の生活にまじりながら写真を撮る。モンゴルの遊牧民族たちとは、3カ月、ともに暮らした。
   阪神淡路大震災で被災し、壊滅した街でボランティア活躍をつづけながら、電気も水道もないプリミティブな生活者に興味をもったことも、モンゴルを撮りにいくきっかけになったという。
   モンゴルの遊牧民が纏う民族衣装や小道具類なども持ち込んで、観客の方に着てもらったり、観るだけなく体験できる工夫もおもしろかった。
   冬はマイナス20度にもなる苛酷なバオ、移動式住居の暮らしで、友さんの仕事はストーブの燃料になる牛糞の採取だったそうな。「乾燥した牛糞を割ると、芳醇な草の匂いがします」。トナカイとの暮らし、いまはほぼ廃れてしまったというシャーマンの話など、他所では聴けない旅の土産話をこころゆくまで楽しむ。写真のなかで吹くモンゴルの草原の風とともに、自然とともに生きる感性、貴重な智慧を運んでくれた。

2015年1月17日土曜日

ワタリウム・イベント「旅の詩、詩の旅」に出演




左から文月さん、和合さん、遠藤さん


城戸さん、遠藤さんのリーディングを上から覗く、和合さん


文月さん。暁方さんのすぐ次がぼくの出番でした。ミセイさん、写真がなくてごめんね!
   1/17、土曜日の午後。東京は外苑前駅
ちかくのワタリウム美術館で、「旅の詩、詩の旅」イベントに出演した。詩人の城戸朱里さんが企画、主催、司会。アメリカ現代詩研究者で和光大学准教授の遠藤朋之さんがトークと朗読の司会をしてくださり、詩人の暁方ミセイさん、石田、城戸朱里さん、文月悠光さん、そして福島から和合亮一さんが出演した。
   テレコムスタッフ制作の詩とアートの番組「Edge」から、旅の詩人、白石かずこ篇、田村隆一篇が上映。つづいて、トーク、朗読という運び。
   トークでの旅の名言は数数あったけど、チベットの旅から帰国したばかりの暁方ミセイさんが、旅を「正当な孤独」と形容したのが印象に残る。その一言に、彼女の旅のセンスや哲学がこめられている気がした。ぼくらが旅に出るのはそれを求めてだし、詩を書く行為も、生きることの「正当な孤独」を求めてのことだと思う。
   日曜日からドバイで執筆滞在という文月さんの堂々とした朗読をはじめ、出演者の朗読もすばらしく、一詩人として勉強させていただいた。さらに、この日、ぼくが着目したのは、オープンマイクでのリーディング。浅野彩香さん、斎藤千尋さん、猫野エミリーさんをはじめ、現代詩手帖などを賑わしはじめた新しい詩人たちが飛び入り。詩も朗読も面白く、刺激になりました。
   ワタリウムからはまた近々、ポエトリーリーディングをしたい、とのお話もいただいた。ご来場のみなさま、本当にありがとうございました!オープンマイク、とてもいいなぁと思いつつ、中華『楽記』で上海鶏とまるで老酒の風味のシャルドネで楽しく更けていく青山の夜。

2015年1月16日金曜日

明日はワタリウム・イベント


   桜のつぼみが、もうではじめている。今日は午後から、さいたま市内の芝川小学校の公開授業に参加出演。明日は、いよいよ「旅」をテーマにした、ワタリウムでのイベントが開催される。ぜひお越しください。

ワタリウム美術館 × 城戸朱理 新春特別企画!

『詩の旅・旅の詩』トーク、リーディング&オープンマイク


日本ならば西行、そして芭蕉、中国ならば李白や杜甫、

そしてヨーロッパならばホメロスからダンテ、エズラ・パウンドまで。

生涯を旅と放浪に過ごした詩人は少なくない。

現代の詩人も、また旅をする。

 詩にとって旅とは何か、旅の詩は、どうやって生まれるのか。

 詩をこよなく愛し、アレン・ギンズバーグらとも親交があった和多利志津子前館長を偲ぶポエトリー・イベント。自由参加のオープンマイクもあります。

  

117日(土)14:0017:00

ワタリウム美術館(東京都渋谷区神宮前3-7-6

Tel03-3402-3001  Fax03-3405-7714 Emailorder@watarium.co.jp

 参加費:2500

 

【第1部】14:00から

アート・ドキュメンタリー「Edge」田村隆一篇・白石かずこ篇(予定、各30分)

上映

 

【第2部】15:00から

トーク「旅する詩・詩からの旅」

和合亮一、石田瑞穂、暁方ミセイ、文月悠光(司会:城戸朱理・遠藤朋之)

 

【第3部】16:00から

リーディング&オープンマイク

・朗読:文月悠光、暁方ミセイ、石田瑞穂、和合亮一(司会:遠藤朋之)

・希望者リーディング(ひとり5分以内、17:00終了予定)

 

【申込方法】氏名・住所・電話番号・E-mailアドレスと

オープンマイク希望の有無を明記の上、Faxe-mailでワタリウム美術館へ。


 企画:城戸朱理 協力:テレコムスタッフ

2015年1月14日水曜日

『地形と気象』快進中


   初出として仏訳が掲載される予定の長い詩を書き上げた朝、つづけて、いま左右社さんのホームページで暁方ミセイさん、管啓次郎さん、大崎清夏さんとともに連載中のリレー定型詩『地形と気象』の8番目の詩を書く。
   みなさんノリノリで、1人が書くと次の詩が早い時で数時間後には届く。
   アップはいまのところ週一ですが、快調に、進行中。
   ぜひお読みください。

『地形と気象』はこちらから

2015年1月9日金曜日

温泉とラーメン

   

   年末から無休で、半休がとれた日。さいたま市から近い春日部に行った。以前も書いたかもだけど、この日光街道ぞいの街は、かつては問屋街で、粕壁、つまり蔵の白壁が軒を連ねた。俳人、石田波郷が住んだ街。いまではアニメの聖地で有名かも。
   ここに天然掛け流し温泉があって、ときどき入りにくる。天気のいい日、駅から歩きながら芦が茂って風情のある古利根川をわたる。煙草を吸いながら、青鷺や鷭といった水鳥を眺め、鶸の可愛らしい声に耳をすます。
   温泉と昼寝がおわると、ぼくが向かうのは、ラーメン屋の「豊」さん。自家製餃子とビール、手作りの大根の酢漬け、ハイボールを何杯かもらい、〆は「中華そば」。呑む人はあまり見かけない。ラーメン誌にもたびたび登場しているので、食べ専のコアなファンも多いかも。以前は、八海山がおいてあり、しかも400円ぐらいだった。
   ゆたかさんのラーメンは、埼玉の地粉ハナマンテンをつかった自家製麺。春日部は昔から製麺所の多い、うどんの街でもある。マスターいわく、麺はラーメンの種類ごとに調合や太さを変えるのだそう。澄んだ魚介系のスープは天然だしにこだわり、豚、鶏ガラのほか、にぼし、昆布、鰹、するめ、貝柱などでとるみたいだ。いつもは醤油スープの中華そばしか食べないけど、今回食べたのは、新作の「鶏白湯」。柚子胡椒、レモンをかけて食べる。チコリやアボカドも入った変り種だけど、うまかったです。
   都内の某有名中華レストランで修業してきたマスターだから、おつまみもラーメンもセンスがいい。中華特有のぎとぎと感がなくて、やさしい味わいだ。明るいジャズがかかっているのも好きです。
    20代の前半、田村隆一がひととき暮らした東京の保谷の近くに住んでいた。その頃、田村さんのエッセイで、銭湯、貸本屋、ラーメンという黄金の詩人コースを読み、ぼくもマネしたのだ。ぼくの町にも当時、貸本屋があり、古びた店内の梁には猫がズラリ。鈴生りになって客を見下ろしたり、書架から書架へ渡り歩いていたっけ。
   温泉と、大人のラーメン屋の休日、どうですか?

2015年1月7日水曜日

七草粥と西脇順三郎



   今日は母が七草粥を作ってくれた。これで、お正月が明ける。
   うちの七草粥は瀬戸内のアゴ(飛び魚)だしのみで炊く。塩はいっさい入れない。七草粥というと、なんとなく思い浮かぶのが、西脇順三郎。随筆集『野原をゆく』のなかで、春の七草と七草粥にふれた箇所があって、セリ、ナズナ、ゴギョウ…ときて、さいごにサトイモ、とくる。そして、お米の粥のかわりに餅を食べるのだそうな。
   まあ、こういうトリビアはいろいろあるのだと思う。以前、西脇の故郷の小千谷市に招かれたとき、七草粥のはなしが印象的だったので、尋ねた。小千谷では七草粥を食べる習慣はなく、かわりに「七日餅」というものを食べるという。寒の入りを過ぎて雪深い新潟では、七草もすずしろなどは手にはいらず、かわりにサトイモを入りたり、米も出せないので、餅なのだとか。海側では干し海老や貝も入れるというから、贅沢。というか、お雑煮との違いは…。
   そして、その後、雪室から出してきたばかりの納豆と砂糖、濃い口の醤油と餅をあえた納豆餅をご馳走になったのだ。あんな美味しい納豆餅は、あれから先もあとも食べたことがない。
   いつか、「越乃寒中梅」(寒梅、ではない)とともに七日餅も食してみたい。

2015年1月5日月曜日

『文芸埼玉』に詩が掲載


   新刊の『文芸埼玉』第92号に詩篇「揺蓮」が掲載されました。
   埼玉県教育委員会、さいたま文学館が年一回刊行する、小説、詩歌、俳句、児童文学、随筆、川柳の文芸誌で、公立図書館や美術館の他、県内の公立学校などにも配布、収蔵される。歴史ある文芸誌は立原道造をはじめ、中村稔氏など埼玉県ゆかりの近現代詩人が収録されてきた。そのような郷土の文芸誌に書かせていただき、光栄です。
   伊藤信昭氏の埼玉詩壇をふりかえる論考「詩の鉱脈を穿つ」も大変興味深い。小説家では辻村仁志氏が書かれていた。機会があれば、ぜひお読みください。 

2015年1月2日金曜日

新春。ワタリウム・イベントに出演

   
   新年早々、イベントの告知で恐縮です。定型リレー詩『地形と気象』で一緒の暁方ミセイさんも出演されます。ぜひお越しください!

ワタリウム美術館 × 城戸朱理 新春特別企画!

『詩の旅・旅の詩』トーク、リーディング&オープンマイク


日本ならば西行、そして芭蕉、中国ならば李白や杜甫、

そしてヨーロッパならばホメロスからダンテ、エズラ・パウンドまで。

生涯を旅と放浪に過ごした詩人は少なくない。

現代の詩人も、また旅をする。

 詩にとって旅とは何か、旅の詩は、どうやって生まれるのか。

 詩をこよなく愛し、アレン・ギンズバーグらとも親交があった和多利志津子前館長を偲ぶポエトリー・イベント。自由参加のオープンマイクもあります。

  

117日(土)14:0017:00

ワタリウム美術館(東京都渋谷区神宮前3-7-6

Tel03-3402-3001  Fax03-3405-7714 Emailorder@watarium.co.jp

 参加費:2500

 

【第1部】14:00から

アート・ドキュメンタリー「Edge」田村隆一篇・白石かずこ篇(予定、各30分)

上映

 

【第2部】15:00から

トーク「旅する詩・詩からの旅」

和合亮一、石田瑞穂、暁方ミセイ、文月悠光(司会:城戸朱理・遠藤朋之)

 

【第3部】16:00から

リーディング&オープンマイク

・朗読:文月悠光、暁方ミセイ、石田瑞穂、和合亮一(司会:遠藤朋之)

・希望者リーディング(ひとり5分以内、17:00終了予定)

 

【申込方法】氏名・住所・電話番号・E-mailアドレスと

オープンマイク希望の有無を明記の上、Faxe-mailでワタリウム美術館へ。


 企画:城戸朱理 協力:テレコムスタッフ



2015年1月1日木曜日

謹賀新年2015





   新年あけましておめでとうございます。
   今朝は初勤行の後、ご挨拶、おせち。お屠蘇は越乃寒梅金無垢、清水卯一さんの黒高麗盃。きんとんは庭の梔子で炊いたもの。
   本年もどうぞよろしくお願いいたします。