5月に大阪で開催された「まどろみの島ーuisce agus loch」で展示されていた、写真家・赤阪友昭さんのオリジナルプリント作品をゆずっていただいた。作品のタイトルは「Uisce #3」。ケルト語のウィスケとは、ウォーター、水の意味。ウィスキーの語源でもある。凪いだ海上で瞑想するような島は、イギリスの北西端ヘブリディーズ諸島の一島、ルイス島だそう。夜明けの時間帯に赤阪さんの愛機、ローライフレックスで撮影した作品だという。
ヘブリディーズの曇天と海は、おなじ色彩でおたがいを映しあっている。この色は、ブルーともグレーともグリーンともいえない。うつくしいとだけ、いえる。おもしろいのは、そのときの天候や光の加減で、作品の海の色が微妙にうつろうこと。広大な空と海の透き間、天地創造にひらいた傷か瞳のようにわだかまる影。ヘブリディーズ諸島は、神格化、人格化され物語られる島々が多い。島という、神。
写真に函封されたあまりに静謐な時の潮流のまえで、ぼくはただ黙ってスコッチを呑む。今夜もその色彩をいいあてようと、灰の味のする黄金のウィスケをゆっくりかたむける。ヘブリディーズと日本の時間が、すこしずつつながってゆく。
いつのまにか、眠ってしまう。