執筆がひと段落する夕方、近所の「マレ」に散歩にゆく。Les Marais(レ・マレ)とは、「沼地」の意味。由来はつまびらかではないのだけれど、中世の大商人ジャック・クールのころから、市街地(村みたいな感覚だけれど)の外にカントリーライフを楽しめる場所を保存しようとしたのがこのレ・マレだ。
写真のように、沼沢地はイーブ川を中心に、水路によって碁盤の升目になっており、ブールジュの住民は小屋を建てたり畑をつくったり、釣をしたり、思い思いの田園生活を楽しんでいる。写真はハロウィン仕様の畑。
印象派の風景画のような、中世のころから変わらない沼沢地にはたくさんの野鳥がいる。鴨、ブラックバード、セキレイ、アカハラに似た鳥たちが鳴き交わし、せわしなく行ったり来たりしている。
ブールジュはフランスの臍、ほぼ中央に位置するのだけれど、いわゆる漂鳥のメッカでもある。漂鳥とは、渡り鳥だったものが群からはぐれて彷徨している野鳥のこと。留鳥は、渡り鳥だったものが土地に居着いてしまい、そこで繁殖するようになった野鳥のこと。留鳥はその土地に縄張りを持っているのにたいし、後からきた漂鳥は決まった餌場を得ることがなかなかできない。移民や追放者のような野鳥が、周縁の肥沃な土地から追われたり、迷ったりしながらたどり着くのが、このフランスの臍なのである。
マレを歩きながら、ぼくは鳥の吟遊詩人たちがなにをうたっているのか、聴き入る。
0 件のコメント:
コメントを投稿