「桜回廊」の土手に、藪萱草の花が、咲いた。
ヤブカンゾウ。見沼では昔から、ただカンゾウと呼ばれていた。梅雨入りからすこし経つと咲きはじめる自生の花は、農家のお年寄りによれば、昔はいたるところで見られたという。
人間たちのちいさな開発のせいで、一時は、ほとんど絶えてしまいかけた。
見沼のヤブカンゾウ保存会のみなさんが、日頃から手入れをしてくださるおかげで、こうして楽しむことができるようになった。
自然とはじつにdelicateなものだ。
別名は、忘れ草、ともいうらしい。
一日咲くと、すぼんでしまう。一日花だからだろうか。みずからが咲いていることを忘れてしまう、花。たしかに、朝は咲いているヤブカンゾウが、夕方には蕾にとじこもってしまう。
蒸し暑く、何日も雨がつづく梅雨に咲いて愉しませてくれる、たいせつな花。ぼくにとって、見沼の梅雨を象徴する花だ。西脇順三郎のいう、symbolだ。
藪の暗がりを明るく灯す、オレンジの花を見ていると、ちょっと元気がでる。
そういえば、近年、カンゾウの会の群落以外にも、見沼のそこかしこでこの花を見かけるようになった。会のみなさんのお陰で、花の種子が旅にでれるようになったのかもしれない。
いつまでも、見沼に咲いていてほしい。
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