2017年2月3日金曜日

蔵前、空蓮房の夜



 蔵前にある、フォトギャラリー「空蓮房」房主、谷口昌良さんと打ち合わせ。今年の上半期に、空蓮房さんで個展をやらないか、とのお誘いだった。とくに写真家のあいだで評価の高い空蓮房さんは、年二回、谷口さんがセレクトしたアーティストの個展のみを開催する。レンタルはけっしてしない、という。

 空蓮房は、蔵前のお寺、長應院境内にあるギャラリーで、とてもユニークだ。ちょうど、茶室のにじり口のような、ちいさな入口をくぐるとトンネル状の玄関と上がり框がある。その奥には、外光のはいらない、すべて白塗りの四畳半ほどのスペースと奥間がある。
 観覧はすべて予約制。一時間一回につき一名しか入場できない。その、繭のようなスペースで、鑑賞者は作品をひとりで思うまま「見て、むきあう」ことができる。見る者にとっても、作者にとっても、贅沢、かつ真剣勝負(?)な時空間が供されるというわけ。詳細はホームページをごらんください。
 
 http://www.kurenboh.com/jp/top.html

 ふだんの個展は写真が中心、詩人の個展は、はじめて。

 いったい、ぼくの言葉に、どんなことができるのだろう?

 戦々恐々として、とりあえずお話しだけでも、と思い、谷口さんをたずねた。浅草に呑みにお連れいただく。
 老舗のすき焼き(谷口さんいわく、ほんとうは、牛鍋)、「米久本店」で乾杯。こちらの牛鍋は、和牛の赤身が中心。さしのおおい牛肉は、江戸風ではないのだとか。店内も庶民風で、(今半より)旨くて、安い。時代小説家鳥羽亮氏の「ももんじ屋」シリーズの世界に飛びこんだみたいだ。
 つづいては、浅草の名バー「Barley ASAKUSA」でスコッチ。竹鶴政孝さんが修行したハイランドの蒸溜所ベン・ネヴィスの18年をいただく。とても、竹鶴さんを髣髴とさせる味。マスターのKさんの腕もすばらしい。カウンターには、直木賞時代劇作家青木文平氏の著書がならぶ。こちらのバーは、青木氏のいきつけらしい。サイン本も販売していて、ぼくも、『流水浮木 最後の太刀』を買わせていただいた。マスターいわく、「これが傑作」とのこと。谷口さんと、写真と文学、ジャズ、モルトウィスキー、仏教などについて、五時間近く歓談したかしらん。谷口さん、ほんとうにお詳しい。じつに充実したひとときをいただいた。


 すっかりご機嫌になったぼくは、当初の怖気もどこへやら。終電で帰宅。酔いが醒めて、自信がなくなってきたら、また、米久とBarley ASAKUSAにゆけばいいのだ。

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