横浜のおとなり、桜木町のインターコンチネンタル・ホテルでカンヅメとなる。前日に新詩集の件で思潮社の出本編集氏、今回も装幀をしていただく、ブックデザイナーの奥定泰之さんと打ち合わせをしており、初校を受けとっていたから校正もすすめた。
部屋は海側で、ときおり、初校から顔をあげて海を見ていた。ふしぎなもので、青のかがやきと、無音の波の綾をながめていると、いいリフレッシュになる。ぼくの場合、ほぼ誤字脱字や表記ゆれをなおしてゆくだけ。でも、これがいちばん苦手な作業なのだ。おかげで、だいぶはかどった。
冷蔵庫にあったバランタインの小瓶をちびちびやりながら。
それにしても、たくさんの観光客が海外からきている。原稿は今回、アンティークものといえるルイヴィトンのアタシェケースにいれてきた。さる御仁からいただいたもの。最近、なぜかひとから「使わなくなったルイヴィトン」をよくもらう。スーツはブルックスのサマースーツ。エクアドルのパナマ帽をかぶったら、観光客からよく英語で話しかけられた。いったい、どんな職業に見えたのだろう。
ひと段落して、オレンジの光に染まりはじめた海辺を散歩する。気温はまだ28度あったが、おだやかな真夏の夕べをたのしんだ。みなとみらいで働く妻と待ち合わせ、吉田町の老舗「梅林」へ食事にゆく。
横浜の実家に泊まりにゆく妻を見送ると、ぼくはひとりホテルのバーへ直行。カウンターのむこうにも、夜の海が見える。カンヅメだから酒はひかえて然るべきだが、暑いので、いや冬から呑んでいたモヒート、ドライマティーニ、おかわり、げん担ぎにとミリオンダラー、などなど。
ホテル泊のバーは、いけない。家路を気にしなくていいので、つい遅くまで粘ってしまう。ああ、二日酔いにならないといいな、と祈りつつ、ぼく以外は客のこないカウンターに閉店の深夜2時までとまり木していた。
原稿、1時間半。バー、5時間。おお、詩よ。なんという、おおいなる無駄が、汝を書くことだろう。アンプの電源が落ち、ジャズのボーカルが消えると、ホテル全室の静寂がせまいバーにぎゅっと押し寄せる。
そして昼間はまったくきこえなかった、かすかな、潮騒。
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