陶芸家 David Louveau ダビッド・ルーボー
Mizuho Ishida
詩人 Francois Coudray フランソワ・クードレー
ブールジュから車で三十分、田園地帯に陶芸の村La Borne ラ・ボーヌがある。日本の益子やイギリスのセントアイブスのような村で、そこで陶芸家を営むDavid Louveau ダビッド・ルーボーさんと奥さんのCorinneコリーヌさんに、「窯入れ」の場での朗読に招かれた。窯入れとは、轆轤などで成形した陶器を文字通り窯に入れて焼きあげること。陶芸家にとって、もっともエキサイティングな晩だ。とくに日本の諏訪で修行したダビッドは、自作の穴窯をもっており、薪と登り窯ですばらしい信楽を焼く。
日本の陶芸のコピーに終らない、ダイナミックで野趣にみちたダビッドの器は、日本の陶芸家にはけっして真似できないフリーな感性、というか野生をつらぬいている。火、土、森、夜、五大を詩の基としているぼくにとって、アーティストとのコラボレーションとしては、これ以上、望むものはない。パリでも評価が高まり、押しも押されぬ陶芸家となったダビッドの公式HPをぜひご覧あれ。
http://david-louveau.com/pages/presentation.html
ブールジュでは同世代の、とても気になる詩人と出会えた。Francois Coudrayフランソワ・クードレー。山男であり、詩にタイトルをつけず、クラシック音楽を愛しみずから詩に曲をつけて朗読する、余白に満ちたうくしい言葉の形象をつむぐ詩人。今週、彼の第三詩集が上梓されるのだが、その原稿を読み、アドバイスを授けたのがなんとかのイヴ・ボヌフォア。彼も同行してくれるというので、ぼくの期待は否応なく高まったのだ。
ところが、ボーヌに到着してダビッドとビスをかわし、新作の中国茶碗とポットで彼の淹れてくれる高山烏龍茶を飲んでいると、彼は穴窯からガス窯に移行しており、今日は窯休めのために窯入れはなしとのこと。作風もだいぶ変化していた。「だって気分が高ぶって待ちきれなかったからさ!」。さすが野生児、ダビッド・ザ・ポッター。
というわけで、我々はコリーヌさんがつくるレストラン顔負けのディナーをご馳走になった後、ワインを持ってダビッドの工房へ。
今回の催しは、お願いをして「見えない波」とのコラボにしてもらった。ぼくは、「見えない波」謹製日仏対訳フリーペーパーを配布しつつ、スロヴェニアでも読んだ「夜釣り」という詩を声明つきで朗読。そして、おお、フランソワ!彼は第二詩集『山』から二篇を読んでくれた。言語詩の先鋭な技法と、彼の故郷であるシャモニーの山々、自然への愛が見事に融和した、静けさと空白にみちた朗読はすばらしかった。
こうしてプライヴェートリーディングが終了したのは深夜。ぼくは「見えない波」公式HPのためのメッセージ動画をダビッドからもらい、フランソワからは詩作品をもらうことを確約。フランソワの詩は日本語訳を付し「見えない波」公式HPに掲載の予定です。