よく田園を流れる川原に、犬と散歩にいく。
今年は温暖化のせいもあり、キュウリなどの夏野菜が早く終わり、だんだん稲穂が色づいて首をしたにさげはじめた。田にはうっすら、ふくよかな米の香りがただよっている。
野鳥たちも、夏鳥がすこしづつ姿を消して飛び去り、いれかわりに冬鳥たちが飛来をはじめた。ギョシ、ギョシと鳴いていたオオヨシキリやホホッホ、フッフーと鳴くチョウゲンボウの声は絶え、スズメに似た美しい小鳥、セッカや貪欲なムクドリの集団がやってくるのだ。
川原に近年できたビオトープの鉄柵に、奇妙な植物が巻きついていた。よく見ると、ヒョウタンに似ている。さらにアザミに似た花とトゲがある。持ち帰って活けてみた。写真のアバンギャルドなやつが、それです。でも、牧野博士『野草図鑑』で調べると、栽培用のヒョウタンの花は、白い。花形も、それこそ瓜に似た花だ。
あとで農家のおじいちゃんにきいてみると、「そいつはヒサゴだぁ」との由。瓢。結局、ヒョウタンてことなんだけど。グラスを傾けながら一時間ほど調べたが、こいつのほんとうの名前はわからずじまいです。それがまた、いい。名前のついている存在なんて、ほんのわずかしかないのだ。世界はまだまだ名前のないものでみちている。西脇さんみたいに、おおポポイ!とただ感嘆し、乾杯しよう。
そんな見沼の田園の諸存在たちに囲まれる日々が、新詩集『耳の笹舟』を生んでくれたように思う。その最終の再校ゲラを見終わったばかり。明日、速達で送る。
読んでいただければわかりますが、とくに小鳥たちにはお世話になった。夏鳥たちの羽音とともに、いま巣立ちのとき。
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