心臓をわずらった父が退院した。酒が好きで、ぼくとは毎晩のように呑んでいた。その父が、すくなくとも一年、酒が呑めない。
ぼくも禁酒につきあおうと思っていたのだけれど、まあ無理な話です。胸の内で「ゴメンネ」とつぶやきながら、ちかくの農家さんからいただいた初物の衣かつぎを秩父の酒でいただく。「きぬかつぎ」とは、お正月のおせち料理などで食べる八頭の小芋(うちの近隣では里芋ではない)。中身が里芋より褐色でねっとりと濃厚なのだ。盃と片口はふだんづかいの額賀章夫のもの。それと古伊万里小皿。晩酌はもう十五年、この組み合わせ。
仕事で新橋によく行っていた父を、小津安二郎が通っていたバー「ジョン・ベック」にいつか連れていきたかった。浦和の田楽も、まだいっていない。
またいっしょに呑める日が、くるといい。
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