南熱海の
網代へ
仕事でゆく
出張中は
推薦文を
頼まれていたので
管啓次郎さん訳
『星の王子さま』
(角川文庫)を
持ち歩いて
読んでいた
ちょっと
曇り空
三島由紀夫の
小説の舞台になった
のは西伊豆
だけれど
南熱海も
鏡のように
凪いでいて
おだやかな海
潮風と波音
カモメの
鳴き声ぐらいしか
聴こえない
静かな
漁村が多い
関東で
食べられる
旨い魚は
網代からくると
昔から
いわれるほど
網代は
魚介の宝庫
ぼくが取材した
ホテルの食事は
ほとんど素朴な
磯料理で
日本酒をかけると
うねうね踊る
アワビのステーキ
はもちろん
初めて食べた
金目鯛の洗い
帆立のワタ焼きも
絶品だった
宿代はひとり
一万円ちょっと
地元出身の
仲居さんに
尋ねたら
ここの魚には
漁師料理が
なにより合うので
ホテルでも
あえて
磯料理を
アレンジしたものを
だしているのだとか
人気がないので
本をもって
露天風呂へ
海の延長の
ような
かけ流し温泉の
湯船に
足を伸ばして
つかると爪先が
水平線にとどいた
足の親指の先で
一番星が輝いて
本のなかで
「ちび王子」が
薔薇に水やりを
している
伊豆の海と星を
眺めながら読む
『星の王子さま』も
なんだかいい
朝食は新鮮な
アジの干物や潮汁
静岡は米どころ
だから
ご飯もほんとうに
おいしい
二年ぶりに
朝飯を
おかわりした
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