5月23日から大阪で開催する、写真家・赤阪友昭さんとの二人展「まどろみの島ーuisce agus loch」のための準備も大詰めを迎えた。『まどろみの島』の原稿やノート、展示用に盛岡市の光原社で買った西洋アンティークの小品をギャラリーに送る。
大阪のあとは京都で仕事なのだけど、二泊三日なので、新調したボストンバッグを持ってゆくことにした。「ボストンバッグ」は完全に和製英語なので、海外で「ボストンバッグください」といってもまったく通じない。英語では衣類を持ち運ぶかばんを「a travelling bag」と呼ぶときもあるけれど、あまり一般的ではないですね。
海外も国内も短い旅ならボストンバッグひとつ。以前はブログでも書いたグルカのボストンバッグをつかっていたのだけれど、もう十五年以上、ハードにつかってさすがにくたびれてきた。思いたって、新調したバッグは、フィレンツェの工房「イ・メディチ」のボストン。ベッキオ橋ちかくに本店があり、とてもフィレンツェらしい、クラシックですてきな店構えだったと記憶している。色はブラックに近い濃紺。革の風合いもいいけど、なにより、軽い。軽さと頑丈さ、防水性がぼくにとっての旅かばんのいのち。ペンとかばんだけは、とにかくシンプルでつかいやすいものが好き。ブランドやメーカー、値段は関係ない。用の美、この一点。
ちなみに、ぼくがいちばん愛用したのは、九〇年代後半に吉田かばんとコムデギャルソンがコラボしたボストンバッグ。あれ復刻しないかしらん。思うだに、グルカは革製品としては至高だけど、重厚にすぎるところがあった。
高級ブランドではないけれど、革工房の街フィレンツェの「あの匂い」がする。それはたぶんフィレンツェの代表的な染皮技法、ベジタブルタン染めからくる匂い。その匂いを嗅ぐとフィレンツェの街角の光景が、夕方のグラッパの香りが、脳裏によみがえる。
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