笠井叡さんの舞踏 撮影風景
奇跡の一本松
2013年2月17日。現代詩歌文学館から
笠井叡さんとテレコムスタッフの「Edge」撮影クルーに同行。
車で北上市から花巻市へ入り、
「3.11」東日本大震災時の津波によって壊滅的な打撃を受けた
陸前高田の海岸へと向かいました。
海水浴場としてもにぎわった漁業の町
美しい松原のあった砂浜も
いまは更地と化し、ただ一本だけ流されずに残った
「奇跡の一本松」に出迎えられました。
瓦礫の撤去作業が行われている海沿いを走ります。
鉄筋の外壁だけになったマンション。
4階までの部屋は全戸窓ガラスが割れていましたが、
カーテンだけが残って風にゆれていました。
崩れそうなホテルや水没したスタジアム。
遮るもののない見渡すかぎりの更地を、
山からおりてくる冷たい突風が容赦なく襲い、
車外に長く立っていられないほどです。
そんななか、
笠井叡さんが突然、舞いはじめました。
快晴ではあるものの、
北国の潮風と粉雪まじりの山下しに
耳と指はかじかみ、目も充分にあけられない。
コバルトブルーの海に峙い
ときには足もとの瓦礫と漂着物に
強風によって押さえつけられながら、
それでも舞い上がろうとする鶴のように
笠井さんの手が鎮魂の見えない翼をひろげる。
すると鴎の群れが海からやってきて
舞踏家の頭上を飛び去ってゆきました。
稀代の舞踏家による、希有な光景を
目のあたりにしてしまった日。
「Edge」の映像で再会できるのを、
心待ちにしています。
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