今月の「現代詩手帖」7月号に「Solar」という作品を書きました。ぜひご一読ください。
ジャズが好きな方なら、マイルス・デイヴィスの名曲「ソーラー」をご存知だろう。
ぼくはいま1991年のアメリカに、記憶をさかのぼる連作を書いている。舞台は、アメリカ西海岸の工業都市、オークランド。サンフランシスコの対岸にある、アフロ系アメリカ人が住民の50%をしめる多人種の街だ。現在も新世代の移民が多い。いわば「黒人街」で黒人解放運動家マルコムXひきいる「ブラックパンサー」の拠点となった地だ。いま、チャールストンやセントルイスで勃発している人種間抗争は日常のリアルでもあった。
そして1991〜92年のアメリカは作品でも書いたように、湾岸戦争が開戦した年。これを機にグローバリズムはより激流と化す。911からいまの安部政権がはじまる発端の年だった。移民社会と越境の記憶、静かにそして急激に右傾化する世界を背景に、当時聴いたりプレイしたジャズと詩がクロスする連作、を意図しています。
ぼくが今回の作品のもとにした「Solar」は、ジャズギター界のヴァーチュオーゾ、パット・メセニーが90年にリリースしたアルバム『question & answer』でカバーしたもの。ベースはデイヴ・ホランド、ドラムはロイ・ヘインズ。あのパットがスタンダードをプレイし、しかもトリオで録音したプライベート音源ということで、当時、とても話題になった。ぼくもギターを弾いており、このアルバムにすっかり夢中になった。テープにダビングして(いまの10、20代の方はわかります?)、楽譜に書きおこし、くる日もくる日も練習したものだ。当時は完コピーに近いくらい弾けた。いまでも、これをこえるギタートリオ・アルバムはなかなかないと思う。
この連作を書くにあたり、原稿用紙を変えた。神楽坂にある相馬屋の方眼升原稿用紙は、升目をやや狭くとってあるのにたいし、申し送り用に通常の原稿用紙よりおおきく余白をとったデザインになっている。作品のベースになったジャズナンバーのクレディットを記入するのに、ぴったりなのだ。
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