ふたたび、京都。さいたまにもどると、辛夷の花びらがひらきはじめている。
京都でいま注目されている五条駅ちかくの割烹「ごだん宮ざわ」さんをたずね、お料理をいただくという企画のテレビ番組に出演予定です。
その下見に、宮ざわさんにおうかがいした。
お店にはいると、すぐ、本阿弥光悦のお軸。乾山にあてた茶席のさそい状で、あわせてあるのは当の乾山による染付鉢。双方、本歌。
こんなおもてなしをうけながら、ご亭主の宮澤政人さんにごあいさつ。口清めの塩麦茶。
ビールからはじめて、酒は三重の貴釀酒「天の戸 芳泉」大吟醸をぬる燗。ぐじのかぶら蒸し、三重は安乗のひらめお造り。お造りにつかわれているのは、清青磁の向付だろうか。
焼物は、本ますの木の芽焼き。角絵皿は、乾山の若柳図色絵皿。これも、本歌。乾山のほんものの色絵皿で料理をいただいたのは、はじめて。
乾山独特の筆勢でえがかれた若葉が、料理のかたわらで楽しく目をひく。ますも若ますだそうで、柳の若葉とともに、おとずれつつある春の愉しみを、舌と目で賞味させてくれた。
李朝の皿に自家製からすみを贅沢にすりおろした蕎麦などがでると、うるいを和えた酢味噌をのせたほたて。うつわは、北大路魯山人。底には線筆で星印。星岡茶寮時代の向付は、もちろん、本歌。
しまいのひと皿は、あわび。房州産だそう。だしがきいていて、歯ごたえはすごくやわらか。うつわは古唐津皮鯨で、釉調もすばらしかった。ほたてとあわびは、冬と春をかけわたす酒肴として最高だけれど、ほたてを黄緑釉のうつわに盛り、あわびが鯨とかけてあるのは、たいへん縁起がいい。
冬のおわりから春のとば口へ。そんな物語を五感でかんじさせる品々は、いうまでもなく、お料理もうつわも、どちらもすばらしかった。
技術と知識のみならず、本歌を実際につかわせてくれるなど、宮澤さんのこころづかいがいきとどいた、ほんとうに贅沢なおもてなしをいただいた。
お腹もこころもいっぱいになり、詩人の城戸朱理さんから教わったバー「アイランド」へ。金柑のハイボールからシェリー樽のキルホーマン、山崎リミテッドエディション、23年ものの竹鶴、〆は苺のカクテル。
その夜も、千鳥足でホテルへ。
0 件のコメント:
コメントを投稿