前回のつづきです。
翌朝は宿泊先のある森を散策。白樺、楓、漆、緑のトンネルになった林道を、コーヒーと天然酵母パンを手にぶらぶら歩いた。
野鳥たちの歌、風と葉擦れの声をききながら、しばし、林道にたたずんで朝食。濃い緑の馨がふってくる。
立派な山ぶどうを見つけた。
子どものころ、雑木林や屋敷森の多い見沼にはあたりまえのようになっていた、山ぶどう。
秋の舗道には、たくさんのワイン色の染みがついていたものだ。それらは子どもたちが道にたたきつけて遊ぶ、山ぶどうの散弾で、壁や服にくっつけると、ものすごく怒られたっけ。
そして、いま、緑ゆたかな見沼でも、だんだん山ぶどうを見かけなくなってきている。
このあまりに鮮やかなオレンジのきのこは、なんだろう。エノキダケのようにつやとぬめりがあるけれど。
直径が十五センチぐらいあるきのこも見たが、『山渓カラー図鑑 日本のきのこ』で照会しても、まったくわからない。
那須の細竹では、そばやうどんつゆにいれて食べるとおいしい乳茸(ちたけ)というきのこが、重用されている。傘をわると、乳液のような汁がでてくるのだが、ソテーにして食べても、おいしい。
もう亡くなってしまったが、きのこ採りをよくするおばあさんがいて、秋には乳茸、春はアミガサダケを採ってもらったことがあった。見目は不気味だけれど、採れたてのアミガサダケの天ぷらは、松茸も青褪める旨さ。フランスやイタリアでは、モレル、といって高級品なのだ。いつも、頭のよさそうな芝犬をつれていて、手編みの蔦籠に何種もきのこをいれていた。自分でも自信のない個体は、毒きのこかどうか、愛犬に嗅ぎわけてもらうのだそう。
きのこの個体から種別を見分けるのは、まさに差異が戯れているようで、素人にはとてもむずかしい。でも、いつか、きのこを独力で採れるようになりたい。きのこに詳しいひとは、それだけ、ゆたかな山林と間近に暮らしていた証左だろう。
自然とともに生きる感覚をささやかながらとりもどした、つかのまの森林浴でした。
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