去る1月16日土曜日。
鎌倉の詩人、城戸朱理さんから、惜しくも閉館がきまった神奈川県立近代美術館鎌倉館のクロージングパーティに誘われる。
パーティは夕方だから、鎌倉文学館の展示を観て、詩人の田村隆一が本を売ったこともある鎌倉は由比ヶ浜通りの古書店「公文堂書店」など、古本屋に寄り道してからいこう、ということになった。メンバーはほかに、詩人の高貝弘也さん、広瀬大志さん、写真家の小野田桂子さんである。
午後二時半に鎌倉駅西口でまちあわせ。高貝さん、広瀬さんとお会いするのは、一年ぶりくらいだろうか。うれしい。新年会は、もともと詩人の田野倉康一さんの発案らしく、詩誌『洗濯船』の同窓会でもあっただろう。そこに野村喜和夫さん、ぼくと妻も呼ばれたのだった。田野倉さんと野村さんはスケジュールがあわず、今回は欠席されたのだが。
鎌倉文学館では、大佛次郎、小津安二郎、川端康成ら、鎌倉に住んだ作家などが愛用した品々を展示する「作家 身のまわり」展が開催。ぼくらは、川端康成の文机や、里見弴のウォーターマンの万年筆、小津が『東京物語』でも小道具として使用した、かの「赤やかん」をながめる。鑑賞後は、三島由紀夫の小説舞台ともなった旧前田侯爵家別邸のまえで記念撮影。薔薇庭から相模湾の水平線が、視界いっぱいに、きれいに望めた。
それから、公文堂や游古堂といった古本屋をめぐる。ぼくは游古堂で、鎌倉文学館でも初版本が展示されていた、青山二郎装の中山義秀『碑』初版を購入。上写真がそれです。
鎌倉近代美術館のクロージングパーティは、大盛況。NHKの日曜美術館でも放映された近美は、有終の美をかざった。近美のパティオというか中庭が会場で、建畠晢さんが加納光於氏と話していたり、詩人の高橋睦郎さん、先日もローライ同盟でお会いした写真家の今道子さん、アメリカ現代詩研究者で詩人の新倉俊一先生もいらしていた。ちなみに、メディアでは通称「カマキン」だが、地元鎌倉市民は近美と愛称していたのだそう。
夜になり、ちかくのビア・バーへ席をうつす。高貝さん、小野田さん、妻がぼくのバスク・ベレーをかぶって遊ぶ。そのバスク帽をかぶり、スコットランド・ビールを手にした高貝さんのポートレートを小野田さんが撮影。
それから、永井龍男や小林秀雄がかよった小町通の割烹「奈可川」で新年会。新鮮なぶり、はまち、いわし、まぐろのお刺身。このわた。あわび。風呂吹き大根。玉ねぎを三日三晩煮込んだ、飴色をとおりこして黒光りする特製ビーフシチュー。穴子と鯖寿司などをいただく。広瀬さんはブラピやキアヌ・リーブスと会食した話を披露。また、ほぼ毎週末、イベントへの出演依頼があるらしい。明日は前橋の関係者と打ち合わせだとか。高貝さんは、いつも携行しているスケッチブックに書かれた自筆原稿を見せてくださった。城戸さんは、トートからおもむろに桃山時代伝世品の絵唐津盃をとりだし、酒を注ぐ。城戸さんも、明日から吉増剛造さんと京都。若き『洗濯船』同人たちの交遊、思い出噺もきけて、とても楽しい一夜だった。
慙愧の念に堪えないのは、スマホで撮った写真がブロガーの不調で、すべて消えてしまったこと。写真はあとで小野田さんからいただこう。
新年の初雪にとざされた、今朝。中山義秀『碑』を手に、ぬる燗。古武士の物語を読みながら、鎌倉の余韻を味わっていた。
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