先週は誕生日。誕生日そのものは、もう、どうでもいいのだけれど 笑 父の古希祝い、そして新詩集『耳の笹舟』と最新刊の共同詩集『地形と気象』上梓のお祝いをかねて、家族で秘蔵のワインをあけることにした。
1993年のシャトー・ムートン・ロートシルトを、浦和の軍鶏料理や「田楽」さんで保蔵していただいていた。
ラベル・アートは、バルタザール・ミシェル・クロソウスキー・ド・ローラ伯爵。伝説の画家、通称、バルテュス。
1946年以降、ムートンのラベルは、シャガール、モネ、ピカソ、ウォーホル、フランシス・ベーコン、ミケル・バルセロなど、当代の著名な画家や彫刻家たちの作品がかざってきた。
なかでも1993年のバルテュス・ラベルは、いわくつきだ。上写真のように、幼女の裸体にも見えるデッサンが、発売後、アメリカで児童ポルノとして発禁処分。まっ白に、ぬりつぶされてしまったのだ。
さらなる珍現象は、この通称ブランク・ラベルが、ムートン・ラベルの不在と空白を象徴するとしてコレクター・アイテムとなったことである。しかも、93年はメドックの当たり年とされているため、二種類のラベルをそろえるワイン・コレクターも多いのだ。ようは、ぼくのムートンは発禁前のオリジナル・ラベルなのです。
ヴィンテージ・メドックの重厚な樽の香りが鼻をぬけると、口のなかにベリーの華やかなキック。複層性はなくて、気持ちいいぐらい直球勝負のワインだ。酸味もじつにまろやか。渋みや雑味がこれほどないワインは、ぼくにとってはじめて。透徹、という感想がうかぶ。
ワインは、もちろん、それ自体を呑んでもおいしいものだが、料理の旨味をひきたてるためにある酒でもある。
ワインの個性とはそのためにあるのであって、ワインのためにあるのではないと思える。ところが、このムートンは料理の旨味を邪魔せずにひきたて、個性のままでありつづけている。
93年のムートンにあわせて、田楽の料理長上甲さんが軍鶏をまるごと一羽、「脆皮鶏」(ツーピーチー)にしてくださった。
くりかえし蜂蜜を刷いて、じっくり備長炭の燠火でローストした皮は、パリパリ。お肉はジューシーすぎず、ほどよくしっとりした、品のよい滋味。
とてもおいしかったから、宴の終わりに上甲さんと記念撮影してもらう。
ぼくのもつムートンは、あと二本。家族やその他のお祝い事のときに、あけようと思っている。
いきおくれにならないよう、せいぜい、精進したいです。
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