2016年5月9日月曜日

種子島の時間1〜熊野海岸



 霧島からプロペラ機にのって、種のごとくちいさな種子島空港へ。レンタカー店でハイブリッド車の「フィット」をかりて、国道75号を南下する。

 島の初日はあいにくの雨。ときどき、スコール。それでも、灰色に煙る雄大な太平洋を目にしながら沿岸をドライブしつづけた。大型連休なのに、島にはあまり観光客がいない。サーファーさんたちが、ややうらめしそうに、海を見ているだけだった。

 種子島は1時間半もあれば、南北を縦走できるちいさな島だ。

 鹿児島や屋久島、奄美諸島とちがい、ガイドブックにもあまり載っていない。ロケットを打ち上げる種子島宇宙センターのほかは、ひたすら南方の緑と断崖、海がひろがるだけの景色がつづく。しかし、島には古くからの信仰と文化がある。

 まずは、旅の無事を祈る気持ちで、上写真、無人の熊野海岸をおとずれる。熊野海岸は熊野古道からつづく、熊野神社ゆかりの浜。地元の人々は、ここから熊野を拝し、島というカミに祈りをささげた。「七ツ島」とよばれる奇岩がカミサマ。岩肌は永遠の波のうごきに削られて、荒々しい。

 『まどろみの島』を書いた、北イングランドのヘブリディーズ諸島もそうだったけれど、種子島は大陸がつくった大地ではなくて、海がつくった大地、だと思う。この景色を眺めながら、そんな考えが深まった。

 車で駐車場にはいっていったら、島の猫が追いかけてきた。

 まあ、ねらいはひとつです。新参者のぼくと妻は、お供物に、空港の茶店のおばちゃんに揚げてもらったカレーパンをちぎってさしあげる。猫のトチガミサマのお気に召したようで、半分くらいはもっていかれた。

 それを見ていた妻が、トチガミサマを「カレーパン」と名づけてしまって。

 種子島の旅の話もしたいですよ。今週土曜日、5/14は『地形と気象』刊行記念イベント@学園坂スタジオへ、ぜひ。

http://sayusha.com/events/talkevent/p=201604212141

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