今月、かなり多忙でした。
朝から書きはじめたエッセイをアップ。すこし時間ができたので、浦和の日本和食学会会員のお鮨やさん「よし佳」で昼酒でもと、盃をえらび、ジャケットの袖に腕をとおした。
突然、スマホのアラームが鳴る。
「Amsterdam Quarterly」〆切。
アムステルダムの伝統的な季刊文藝誌で、ぼくは今年、連作詩「Asian Dream」のオランダ語訳を連載させてもらっている。季刊なので、一回の掲載が百五十行ほど。長詩か数篇の詩をださなくてはならない。
一行も、書いていない。
盃をしまい、ジャケットを脱ぎ、部屋着にしている和服に着がえ、銀軸のボールペンをとりだしてノートにむかう。訳者さんが困るので、〆切、必守。
昼食に、母が、ことし初の「冷や汁」をつくってくれる。
母の実家、埼玉県吉見町の夏の郷土料理で、きざんだ葱、大葉と、すりおろした炒り胡麻をいっしょにつきまぜ、氷、冷水、味噌でといた、滋味あふれるつめたい汁料理だ。
薄切りのきゅうりをいれ、ご飯にかけて、かきこむ。
ほんらいは冷飯にかけて食べる。炊飯器のない昔は井戸水で飯を冷やし、保存しつつ、冷え冷えのご飯に、冷え冷えの冷や汁をかけて農作業のあいまに食べたのだとか。
夏は食欲を増進させてくれる。
めずらしく、おかわりして食べた。
冷や汁を食べると、いよいよ夏がくるなぁ、と思う。
夕方、できた詩を原稿用紙に清書。アルスメールに住む、オランダ語訳者のホーテン・ヴァン・スズキさんに、詩をファックスする。あと、二十行ほどあるので、夕食後、短詩を追加しよう。
薄暮の林で茅蜩のささめきがおこった。
梅雨明けも近いかもしれない。
作動中のファックス機を見ながら、アムスと冷や汁、その遠さに、くらっとした。
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