2015年9月23日水曜日

田園のおはぎ


    お彼岸の中日。ご近所の方が、おはぎをつくってもってきてくださる。ぼくの住む田園はかつては農村で、年中行事や祝い事がある朝は、農家のお嫁さん(おばあさま方)が、手づくりのおはぎ、ぼた餅、草餅、精進揚、お赤飯などを親戚や近所にくばるのだ。布施する、のである。

    とはいえ、農村から急速に田園になるにつれ、農家さんはやむかたなくサラリーマン家庭となり、こうした利他行をできる家庭もすくなくなった。

    このおはぎ、あんこは小豆から自家製。畑で収穫したのを蒸してこし、あんこにするのだ。もちろん、お米も、自分でつくった新米、である。

    お彼岸は、日本では春と秋の二期でおこなう地域が多い。諸説あるものの、よく春のお彼岸は、ぼた餅(牡丹)、秋のお彼岸は、おはぎ(萩)といわれる。双方、薄紫の花の色をあんこで、かたちをお米でたとえているのだ。

    萩の花びらにたとえるなら、おはぎは俵型、なのだけれど、うちの田園では、おはぎもぼた餅もかたちは、丸。ただし、おはぎは、ぼた餅より圧倒的におおきい。かつては、おにぎり大だった。俵にせずに、中の餅米がついてあるか、握ってあるかのちがい。

    そして、大切なのが、おはきが収穫したての新米のお披露目であり、豊作への感謝の気もちをあらわす料理である、ということ。えもいえぬ、芳ばしい新米の香りと食感がじわーっと口中にひろがる。ちなみに、わが田園では、春彼岸は草餅、よもぎ餅もよく食べます。そんなローカルルールこそ、本当の意味での文化かもしれない。

    嫁入りしてから半世紀以上たつお嫁さんたちも、だんだんモダナイズされて、つくるおはぎがちいさくなってきた。いつまでもお元気で、おはぎをつくり、伝えていってください。

    そして、おはぎよ、俵になるな、丸であれ。

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