9月6日、新宿では一万人をこえ、さいたま市では大宮など、安倍内閣と自民公明連立与党による集団的自衛権/改憲法案に反対するデモが日本各地でおこなわれていた。そして、その日、ぼくは一篇のエッセイを入稿した。
『現代詩手帖』7月号に寄せた連作詩「Asian Dream」の一篇を読まれた編集者さんからの注文で、小学館の教育誌『edu』に掲載予定のもの。
お題は「いま中高生に読ませたい名作文庫」で、ぼくはアメリカの小説家ティム・オブライエンの短編集『本当の戦争の話をしよう』をとりあげた。版元は文春文庫で、村上春樹訳。
内容は掲載誌をぜひお読みください。でも、ひとこと。
小説家は戦争の「本当」をあえてフィクションで書いた。ベトナム戦争の最前線で取材したのだから、当時はノンフィクションを書くことも充分にできたはずだ。
なぜだろう?
1990年に出版されたこの本をはじめて読んだのは、ぼくがやはり高校生のときだった。エッセイを書きながら、当時の自分がどんなことを感じたか、考えたか、思い出そうと努力した。
ただひとつだけ、書きながら明確に気づいたのが、いまの高校生との共通点。
それは、ぼくが高校生だった1991〜93年には現在の改憲法案の端緒ともなった湾岸戦争がはじまり、集団的自衛権と海外派兵の問題が切迫したこと。
マルクスではないが、なんという歴史の反復。なんという文学の、詩のアイロニー。
この本はぼくにとっても、長年にわたる宿題だったのだ。
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