12月12日土曜日、早稲田大学文学部で装幀家の奥定泰之さん(写真右)と思潮社編集部の出本さん(写真左)とともに、イベントに出演。多くの学生さんが参加してくださった。ありがとうございました。
最初は、エディターの出本さんが『耳の笹舟』(思潮社)から選んでくださった「耳鳴り」を、ハンドアウトをもとに朗読。つづいて装幀と編集、そして詩の執筆など、一冊の詩集の生成をめぐって三人でトークした。
下記は、奥定さんが許可くださった、『耳の笹舟』秘伝レシピ。ブックデザイナー志望の方は刮目あれ!
[資材]
カバー:モス・130ライトグレー
オビ:リ・シマメ・スノーホワイト
表紙:彩雲・あじさい
見返し:彩雲・あじさい
本文:OKミルクリーム・ロゼ
[本文フォント]
漢字:ヒラギノ明朝 W3
かな:游築36ポ仮名 W2
奥定さんの装幀は、詩中の言葉にインスパイアされてはじまるという。
もちろん「音ずれ」もあったのだが、「透き間」という言葉にも反応されたそうだ。
『耳の笹舟』は、上記のようにモスの表紙カバーのしたにちらりと見える、本体表紙にマーブル調のスカイブルーの紙があしらわれていて、とくに目をひく詩集だ。奥定さんは『耳の笹舟』は本質的に中間言語の領域、つまり「透き間」の言葉と考えたのだとか。この把握が、装幀のモティーフにつながったという。また、本文用紙も極薄の赤味がついており、活字の特色黒を微妙に変化させる。ぼくの目だと、自然光のしたでかすかに藍へとかたむくのだ。
それと、ぼくはよく見返しにサインをするのだが、これも奥定さん、よく観察されている。青空色の和紙にちかい特殊紙に万年筆でサインすると、じつに、映える。ぼくには、なんだかもったいない。
奥定さんの装幀は斬新でありながら、同時に深さを感受させる。詩集を読みすすめながら、ひとひとつ、装幀の妙に気づかされるしかけやたくらみにみちていると思う。その意味で、詩的書物は装幀自体も、喩と多義性へひらかれることになる。
エディターの出本さんもいっしょに、装幀の色校やゲラの一部をもちいながら、本の生成の現場を語られていた。おふたりの興奮が伝わってくる。
今年の初夏に出本さんにお渡しした『耳の笹舟』の原稿用紙は、二百枚にのぼった。完全な紙幅オーバーで、高木総編集長と出本さんによって半分以下に選別された。さらに総ページ数130頁内におさまるように、詩行をシェイプアップしてきたのだった。
海外翻訳はあっても日本語での掲載がない詩も数篇でてきてしまい、ぼくではわからない客観的で的確なアドバイスをくださったのが、高木さん、出本さんだった。
それでも『耳の笹舟』は通常の詩集の1.5倍の行数。今回の詩集はぼくにとっても、エディターと詩人が二人三脚で編んだ、という感想がある。
そんなトークが一時間半におよんだ。学生のみなさんも、とても真剣にきいてくださった。
終了後は、神楽坂で打ち上げ。奥定さんがご馳走してくださる。アイリッシュパブで、ハギスを食べ、英国風に仕上げた泡のない地ビールを飲む。蕎麦屋でマッサンのブレイクでさらに手にはいりにくくなった広島の銘酒「竹鶴 」をぬる燗で呑む。
ぼくらは、かなり呑んだ。夜の街に消えてゆく出本さんを送ったあと、奥定さんを誘って、飯田橋「西安」に名人芸の刀削麺を食べに。奥定さんはちゃんと?いちばん辛い麻辣麺を食された。
多忙なおふたりが、土曜日にめいっぱいつきあってくださった。おおいに呑み、話した。そのことが、とてもうれしい。
こんどは、浦和にもきてくださいと、再会を約束したのだった。
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