妻の誕生日に半休をとって、稲村ヶ崎にあるイタリア・レストラン、「ロンディーノ」に誘った。
本ブログでも、何度か書いたことのあるレストラン。詩人の田村隆一さんが好んだお店だ。
田村さんが連続的な二日酔いで、なにも食せないときでも、ここの「ニンニクと唐辛子のスパゲティ」は口にした、と奥様の悦子さんが話してくださった。詩人が食べない日がつづくと、車でロンディーノにきたのだとか。
ぼくらがロンディーノにいった日は、あいにくの曇天。晴れると、相模湾に面したこのレストランは最高。田村さんもよくテラス席に座って、グラスをあげていたそうな。
前菜。相模湾の飯蛸は、いつもどおりおいしい。ぼくをロンディーノにはじめて連れてきてくださったのは、詩人の城戸朱理さん。その夕べ、二十代のぼくは、こんなにおいしい飯蛸のオリーブ・オイルあえを食べたことがなくて、びっくりしたものだ。以来、かならず食べる。かならず食べたい、といえば、相模湾の手長海老も、そう。残念ながら、その日はなかったのだが。
そして、二皿目。田村さんの詩集『毒杯』には「娼婦風」という詩がある。「西洋人はレストランに入ると/まるで詩集を読むみたいに/時間をかけて眺めている」という、あの詩。
その「村の海岸にあるスパゲティ屋」というのが、ロンディーノのことかはわからない。「オリーブ ケッパー アンチョビ トマト入り」という詩行そのままのパスタだけれども。
ぼくはいつも、田村さんに哀悼の意を表し、このお店では「娼婦風スパゲティ」をたのんでしまう。
三皿目、メインは「メカジキのインボルティーノ」、でした。
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