8/28の夕方、クロアチア国境をこえてCakovecに入る。Nikola Zrinski Libraryでの朗読とトークのためだ。国境での検問が厳しく、30分も遅れてしまった。
出演メンバーは左から、Dragana Mladenovicさん、ぼく、そしてCvetka Lipusさん。啓次郎さんと友さん(上の写真2点は友さんの撮影)も応援に来てくださった。
Cvetkaさんはスロヴェニアとオーストリー国境近くの出身で、まさに多文化・多言語を体現するような詩人。受賞歴も多く、仕事で10年以上暮らしたアメリカでもその名が知られている。彼女は会場に着くなり、テレビ局からインタヴューを受けていた。
さっそくリーディングと簡単なトークがはじまる。周知のようにクロアチアはユーゴスラビア紛争の戦地だった国。ここには掲載しないけれど、街には戦没者慰霊碑がそこここにある。没年は90年代が多く、みな20代~40代。じつは上の写真のドラガナの故郷、セルビア共和国もユーゴ紛争の戦地だった。今回の詩際で彼女が朗読した詩は戦死者やレイプ被害者などをテーマにした作品が多い。彼女にとって、戦争は日常の悲劇だったのだ。
ドラガナが詩を読むと、前席にいた夫婦が手をつなぎ、涙を流していた。50代ぐらいの二人だったが、戦争で息子さんを亡くされたのだった。
リーディング後に「日本のポップカルチャーに興味がある」という女子中学生と話した。新しい世代が確実に育ってきている。
コーディネートしてくれた図書館の司書さんに案内され、すこし街を歩く。中世の建物のなかに現れたのは、日本の公団アパートのようなビル。ソ連時代の名残りだとか。
日本から来たぼくは、戦争の生々しい記憶をもつクロアチアの人々にとって、やや部外者だったかもしれない。でも、ぼくにとってこのちいさな朗読会は、ここに来なければできない、貴重な経験だった。
夕闇に沈みかけたクロアチアの街を歩きながら、ほんとうの詩とは、言葉の力とはなにか、しばし物思いにふけった。
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