2015年5月27日水曜日

大阪イベントが無事終了


    5/23の夜、「まどろみの島ーuisce agus loch」展のオープニングイベントが無事に終了しました。ご来場のみなさま、ありがとうございました。
    展示じたいはまだまだ5/30までつづきます。下記「フォトギャラリー・サイ」特設ページの更新をぜひお見逃しなく。


    オープニング直後からたくさんのお客さんがお見えになり、ギャラリー置きの詩集『まどろみの島』は早くに完売。ギャラリーでも追加入荷をしています。京都在住の岡本啓さんはじめ、関西の詩人もご来場くださる。なかには、一昨年、ぼくが選者を担当した「現代詩手帖」投稿欄の詩人もいて、お会いできてうれしかった。
    写真は左から、写真家・赤阪友昭さん、ぼく、そして、同時期に中之島のイタリア文化会館 大阪で「ULYSSES」という非常に魅力的な写真展を開催していたイタリア人写真家Leo Pellegattaさん。レオさんの展示はこちら。


ぼくらは意気投合し、こんど東京谷中での個展に遊びにゆくことにした。
   「まどろみの島ーuisce agus loch」展は、いま第二弾の展示が東京でも企画されています。本展とイベントについては、レビューの掲載が予定されているので、ここで詳細は語りません。
    念願だった写真家とのコラボが、理想のかたちで実現できたこと。ぼくの夢のひとつがかないました。そして、大阪、他の関西エリアのみなさんのあたたかいお心、忘れません。また、次の機会にお会いできますのを楽しみに。See you later alligator!

2015年5月23日土曜日

「まどろみの島ーuisce agus loch」展開幕





    写真家の赤阪友昭さんとの展示、「まどろみの島ーuisce agus loch」がいよいよ本日、大阪は福島区の「フォトギャラリー・サイ」でオープンしました。ノルド語で「ウィスケ アガス ロッホ」は「水と石」。ウィスケは生命の水で、whiskyの語源になった言葉です。
    詳細は、こちらの特設サイトへ。


    12時からのオープンでしたが、もうすでに何人かのお客様がみえられています。今晩は、19時から、友さんのすばらしいヘブリディーズ諸島のスライド、ぼくとのトークや詩の朗読があります。
    ヘブリディーズの幽玄な風景写真と詩集『まどろみの島』の原稿、未収録・未発表草稿が語りあう展示のコンセプトは「旅する書斎」。
    展示作品はもちろん、ギャラリー内で詩集やヘブリディーズ諸島関連の本を読んだり、お茶もできます。tokkikkiさんの楽しく食べられるオーガニックお菓子、バターや卵をつかわずココナッツオイルをつかったビスコッティ、クッキーやスコーンも味わえます。詩人のロマンス、ウィスキーは呑めません。友さんの奥様、亜樹さんのプロデュースで女性にやさしい展示になっています。
    展示作業をしていたら「あれ、おれ、こんな詩書いたっけ?」という詩も何篇かでてきて、自分でもびっくりしました。ぜひご来場ください。

2015年5月22日金曜日

「まどろみの島ーuisce agus loch」展前夜




    現在19時をすぎたところ。写真家の赤阪友昭さん、先生がついに展示作業にのりだした。いままで、プリンタの不調が彼を苦しめていたのである。
    場所は、大阪は福島区の聖天通り商店街の奥にある「フォトギャラリー・サイ」。周囲には、大阪の下町のじつに風情ある優良な呑み屋さんがいっぱい。金曜日の明かるいうちから、常連さんが大阪風もつ鍋屋に陣取り、初夏の風に吹かれながらコップ酒を傾けている。いい商店街だ。
    しかし、先生の入魂の作業をまえに、ひとりで呑みにゆく、なんてことは人として許されぬ行為であろう。いや、詩人なら許されるか。人じゃないから。いずれにせよ、ぼくはおとなしくノンアルコールで先生の作業を見守り、ときに手伝いを申し出、役にたたないことがわかると、本棚にあった、何度も読んでいる田村隆一『詩人のノート』を最初から読み返すのみ。
   「入り口の写真が決まれば、ほかの写真はすべて決まります」、と友さん。それは、詩のファーストラインとおなじだろうか。
    先生のおかげで、展示は着々と形になってきていて、しかも、写真と詩による幻影のなかの「旅する書斎」が出来しつつある。あすからの「まどろみの島ーuisce agus loch」展、ぜひご来場ください。

誕生日のすごし方



  5月21日は誕生日。まあ、もうそんなにうれしいわけでもないけれど。あすからしばらく大阪、京都なので、午前中に書評とエッセイを脱稿し、打ち合わせもないから、とりあえず昼食は寿司屋で呑む。
   浦和の「よし佳」へ。さすがにシンコはでていなかった。作家山口瞳の「シンコを食べなければ私の夏は終わらない」が、温暖化のせいで、いまでは「夏ははじまらない」になってしまった。かわりに、カマスの昆布〆などをいただく。お銚子は二本。
    午後に帰宅して原稿。左右社さんから依頼された、管啓次郎さんの近著『ハワイ、蘭嶼』の書評五枚。それから、大阪での「まどろみの島ーuisce agus loch」展のための身支度。丸ノ内のブルックス・ブラザーズで買ったシャツをつめこむ。
    夜は家族と浦和の「田楽」へ。プレゼントにヴィトンの名刺入れをもらう。しかし、肝心の名刺を、ここ半年つくっていない。帰宅して、エド・マクベインの「87分署」シリーズを読んでいると、詩人の城戸朱里さんから電話。11月の鹿児島で行われる国民文化祭鹿児島大会後の「遊び」の打ち合わせ。城戸さんはあらたに桃山時代の古備前らっきょう徳利を手に入れられたようで、骨董話で長電話。そんな、不惑すぎの誕生日でした。

2015年5月19日火曜日

詩の古本と蕎麦呑み





   青山での打ち合わせが早めに済み、ちょうど一澤帆布のトートバックを持っていたので、本の町、神保町へ。
   すくなくとも月一で詣でるべきだけど、なかなか時間がとれず、二カ月ぶりの古書店めぐり。今回は書き下ろしの本のための資料、昭和後期、平成の詩論集を買うのが目的だった。小宮山書店で大岡信『現代の詩人たち』上・下巻、田村書店で粟津則雄『詩の意味』などを購入。どちらも墨書署名入りでした。詩論集ではないけれど、おお!とつい手にとったのが、書肆山田の「草子」シリーズのたぶんコンプ。
    この「書き下ろし叢書」シリーズは、各号が個人特集になっており、ぼくにとっては伝説の叢書シリーズだった。面白いのは、装丁。下写真でご覧のように、リブレットは背で綴じらておらず、一見ページが不規則に並んだまま、一枚の紙のようにひろがる。これは、本文を印刷し、裁断するまえのシートをそのまま八つ折りしてあるからで、読むときはページ番号を追ってあちこち視線を彷徨わせる仕掛け。同世代の叢書ではないだけに、長らく垂涎の的だった。ぼくの世代でも、その存在を知る詩人はすくないだろう。1号は瀧口修造「足と砂と   日録抄」。もちろん、これも貴重な資料だ。
    うれしくて、新築された「神田やぶ」に入り、まずビールと練り味噌で乾杯。つづいて、日本酒とあいやき(合鴨と根深、長葱を鴨の油でいためたおつまみ)をお供に戦利品を読み耽る。お銚子が三本あくころ読みおえた。さいごは、蕎麦つゆを味わうためのせいろで〆。

2015年5月16日土曜日

旅のボストンバッグ



    5月23日から大阪で開催する、写真家・赤阪友昭さんとの二人展「まどろみの島ーuisce agus loch」のための準備も大詰めを迎えた。『まどろみの島』の原稿やノート、展示用に盛岡市の光原社で買った西洋アンティークの小品をギャラリーに送る。
    大阪のあとは京都で仕事なのだけど、二泊三日なので、新調したボストンバッグを持ってゆくことにした。「ボストンバッグ」は完全に和製英語なので、海外で「ボストンバッグください」といってもまったく通じない。英語では衣類を持ち運ぶかばんを「a travelling bag」と呼ぶときもあるけれど、あまり一般的ではないですね。
    海外も国内も短い旅ならボストンバッグひとつ。以前はブログでも書いたグルカのボストンバッグをつかっていたのだけれど、もう十五年以上、ハードにつかってさすがにくたびれてきた。思いたって、新調したバッグは、フィレンツェの工房「イ・メディチ」のボストン。ベッキオ橋ちかくに本店があり、とてもフィレンツェらしい、クラシックですてきな店構えだったと記憶している。色はブラックに近い濃紺。革の風合いもいいけど、なにより、軽い。軽さと頑丈さ、防水性がぼくにとっての旅かばんのいのち。ペンとかばんだけは、とにかくシンプルでつかいやすいものが好き。ブランドやメーカー、値段は関係ない。用の美、この一点。
    ちなみに、ぼくがいちばん愛用したのは、九〇年代後半に吉田かばんとコムデギャルソンがコラボしたボストンバッグ。あれ復刻しないかしらん。思うだに、グルカは革製品としては至高だけど、重厚にすぎるところがあった。
    高級ブランドではないけれど、革工房の街フィレンツェの「あの匂い」がする。それはたぶんフィレンツェの代表的な染皮技法、ベジタブルタン染めからくる匂い。その匂いを嗅ぐとフィレンツェの街角の光景が、夕方のグラッパの香りが、脳裏によみがえる。

2015年5月13日水曜日

「文藝春秋」に詩が掲載




    5月10日発売の「文藝春秋」六月号に詩が掲載されました。機会がありましたら、ぜひお読みください。
    10行の詩で、タイトルは「In the Year of the Dragon」。いま、ぼくが滞在した1991から92年のアメリカを舞台に「Asian Dream」という連作詩を書いている。その年は、イランイラク戦争、通称「湾岸戦争」が勃発した年。戦争下にある国で、ぼくは十代の一年半をすごした。
    この連作のタイトルは、当時、ぼくが大好きできいていたジャズの曲名をそのまま使わせてもらっている。もちろん、曲をききながら詩も楽しんでいただけるよう書いているつもりなので、ぜひ、YouTubeなどで検索してみてください。アルバムをお持ちの方は、願ったり叶ったり。連作詩「Asian Dream」は今年から書きはじめたのだが、掲載は今作で四篇目。
    今回の詩は、セロニアス・モンクやサン・ラの影響を強く受けたと思しき女性ピアニスト、ジェリ・アレンの同名アルバムが出典。レーベルは、いまはもうないJMTというかなりとんがった、面白いレコード会社だった。
Geri Allen-piano; Charlie Haden-bass; Paul Motian; Drums.
というメンバー。曲は、ポール・モチアンのオリジナル・ナンバー。審美的としかいいようのない、モチアンらしいバラードです。いつも詩作品の末尾にクレジットを付記しているのだけれど、今回は誌面の都合により、ここに記しておきました。
   昨年、惜しくも、ベースの巨匠、チャーリー・ヘイデンが亡くなり、またモチアンもいない。ちなみに、モチアンはモシャンとアメリカでは発音していた。いわずもがな、ほんとうに、ふたりはすばらしいミュージシャンだった。もちろん、人間はいつかこの世を去る存在だが、それでもティーンのときにあれだけ夢中になったミュージシャンがもういないのだと思うと、信じられない気持ちになる。ここに、哀悼の意をささげたい。

2015年5月10日日曜日

「まどろみの島ーuisce agus loch」展開催間近


    写真家の赤阪友昭さんとの詩と写真展「まどろみの島ーuisce agus loch」が、いよいよ開催間近となりました。詳細は、下記ホームページをぜひご覧ください。


    赤阪友昭さんは、小説家・池澤夏樹氏とのコラボレーションをはじめ、雑誌「switch」や「coyote」の写真家としても知られる。ぼくは詩人、比較文学者の管啓次郎さんの紹介で、友さんとはじめてお会いした。スロベニアでの国際詩祭でのことだ。
    会場は大阪福島区にある「フォトギャラリー・サイ」。数奇屋ふうの純日本家屋で、アラーキーこと荒木経惟氏や港千尋氏の個展も開催したこともある。「まどろみの島ーuisce agus loch」展では、アートディレクターを赤阪友昭さんがつとめてくださる。いったい、どんな展示となるか。いまから楽しみです。
    5月23日のオープニングはぼくも出演し、トークと朗読をします。乞うご期待!

2015年5月1日金曜日

詩への旅、その2。不来方再訪







    北上から盛岡へ。材木町から開運橋を見る。その向こうが、不来方橋。北上川に、まだ雪を冠した岩手山が見えて、盛岡再訪の気分がたかまった。春靄がかかってはいたけれど。盛岡は宮澤賢治、石川啄木の街であるとともに、ぼくにとって城戸朱理さんの『不来方抄』の街でもある。
    母の希望で材木町の民藝店「光原社」に立ち寄る。母は宮澤賢治の『注文の多い料理店』初版本や原稿のレプリカをじっくりと見ている。ぼくは井上尚之氏のスリップウェアが欲しかったのだが、すでに売り切れ。来たる5月23日から大阪で開催の「まどろみの島ーuisce agus loch」展のための買い物をした。母は希少価値の高い、山ぶどう皮で編んだ大籠をもとめたようだ。
    買い物や民藝を見にいってなかなか帰ってこない母を喫茶室「可否館」で珈琲を飲みながら待つ。北上川に面した芹沢銈介揮毫、賢治の「雨ニモ負ケズ」が書いてある白壁を眺めていると、川向こうからお囃子がきこえてきた。女子高生がジャージ姿で鬼剣舞の練習をしていた。まさに、したたるような、柳の萌黄のしたで。