2014年6月6日金曜日

若き日の李朝盃


「見えない波」
クラウドファウンディングに
寄付された方々への
リターンを
発送する準備に
とりかかっている

うえの写真は
そのなかのひとつ
「詩人のぐい呑み」
セットに入った
李朝初期白磁盃

17世紀以降の
発掘物で
たぶんもとは
祭器だろう
いわゆる
ころ茶碗の寸法で
酒盃に見立てた
ものだ

写真では
肌がやや
青みがかって
見えるけど
李朝初期の白磁は
こんなふうに
陰りのなかでは
釉薬が青みを帯び
陽のなかでは
やわらかな
白色に変わる

よく雪色と
形容されるのは
新雪や流氷が
光の加減で
純白や青に
転変するさまに
似ているから

不思議なもので
おなじ朝鮮の
陶工が
ひいた
古伊万里の
白磁でも
こんなふうには
ならない

ぼくの考えは
李朝初期の釉調は
とくに
白磁に限りなく
近い青磁
だということ

ぼくがこの盃を
手に入れたのは
二十代の前半

きっかけは
ある詩人の
フレーズに
李朝白磁が
登場して
色味と風合いを
どうしても
現物で確かめ
たかったからだ

そしてすべからく
器がそうであるように
たしかに
物は手にして玩り
付き合ってみないと
わからない

暑い夏は
李朝盃を冷蔵庫に
入れておいて
帰宅するなり
冷酒を注いだものだ
そして
若い日の
原稿用紙の傍らには
かなりの頻度で
この盃があった

じつに
ひさしぶりに
とりだした
この李朝の盃と
別れの酒を
愉しんだ

水にくぐらせ
最初はしっとりと
そして
つややかに
濡れてゆく
白の土肌に
二十代の頃とは
ちがう感興が
ほのかに湧いた

0 件のコメント:

コメントを投稿