2016年4月29日金曜日

『地形と気象』刊行!


    昨年、左右社ホームページで連載された、詩人の暁方ミセイさん、大崎清夏さん、管啓次郎さんとの定型連詩『地形と気象』がサイバースペースを飛びたって、おなじく左右社から書籍刊行されました。
    本書はバイリンガル詩集。日本在住の詩人、ジェフリー・ジョンソンさんが英訳を手がけてくださった。

    当初はウェブ企画としてスタートしたこのプロジェクト。まさか本になるとは思わなかった。
    装幀は五十嵐哲夫さん。ウェブ版のメインイラストは重厚だったが、紙の本は一転してシンプルで軽やかなソフトカバー。全体的に白を基調として、カバーの表面が厚みのあるやわらかな光沢のマット仕上げになっている。「紙」を強く喚起する装幀だと思う。結果的に、サイバースペースと書物の海峡を航海した、ぼくらの言葉の旅にふさわしい本にしていただいた気がしています。
    ウェブ版、書籍版の担当編集者・東辻さん、樋口さんにお礼を申し上げます。もちろん、ミセイさん、清夏さん、啓次郎さんにも。

   そして、 来たる5月14日は「学園坂スタジオ」にて、ミュージシャンの港大尋さんプロデュースによる、『地形と気象』刊行記念イベントがあります。    
    詳細はこのリンクから。


   ふるってご参加ください!

2016年4月28日木曜日

たけのこ





   もう初夏のような陽気がつづいてますが、うちの竹藪のたけのこもいつのまにか、すくすく、どんどん、土から顔をだしてきてしまっている。

    さっそく、妻にぬかで灰汁ぬきをしてもらい、晩ごはんに食べた。上写真は、たけのこのやわらかな穂先をせん切りにし、青柳の刺身と京都の白味噌でつくった酢味噌であえたもの。色絵蕎麦猪口は正木春三。ぼくがつくりました。

    中央部は、うすくスライスしてたけのこの刺身に。塩をふって食べる。土楽窯の土鍋には、川越は小野食品の湯とうふ。
    酒は、緑川。春の酒器には、いつもの鶏流山窯の篆刻若柳粉引徳利と草創期伊万里盃。

    だいたいにおいて、ぼくの夕食は向付で野菜を一品、魚か鶏、とうふで一杯。最後はかるめのご飯と汁物で〆る。主菜が刺身なら、すこしのこしておいて、熱い白飯と食べる。この晩は、妻の炊いた牛蒡と大葉の炊きこみ飯。京都山田味噌のゆうげ汁。

    そういえば、祇園四条の「千花」で、灰汁ぬきをしない、完全に生のたけのこの穂先を刺身にしていただいた。えぐみはなく、ほんのすこし粘って、地下水のような風味がある。山芋に似た食感で、いつもの刺身とまったくちがう、たけのこ。
    ぼくの亡くなった曾祖母がたけのこ掘りの名人だった。子どものころ、地上にまったく顔をださない稚たけのこを、曾祖母がどう掘り当てるのか、不思議でならなかったなぁ。

    今年も、自然の恵みであるたけのこに、たくさん楽しませてもらった。

2016年4月26日火曜日

ふたたび京都の夜


    4月22日は『マイケル・パーマー』で本年度の鮎川信夫賞批評部門を受賞した山内功一郎さんの贈賞式へ。
    アメリカ現代詩研究の原成吉先生、詩人の城戸朱理さんをはじめ、静岡から向山守先生も。長年の友人知己たちが駆けつけた。

   その後、ぼくは週末にかけて京都と神戸へ出張。今回はクライアントの要望もあり、「ごだん    宮ざわ」さんへの訪問はかなわず。

    祇園四条の「千花」で会食後、城戸さんに連れてきていただいたバー「アイラ・モヒート」へ。アイラ島のモルト・ウィスキーとモヒートをメインテーマにしているという、珍しいコンセプトのオーセンティックバー。今回、マスターに店名の由来をきいたら、長年愛読されているヘミングウェイの影響もあるのだとか。
    まずは、看板メニューのモヒート。マスターが「時間がたつほど濃くなる」というオリジナル製法のモヒートは、氷にもなにやら仕掛けがあるらしい。文句なしのお味。

    つぎはシングル・モルト。前回いただいた幻のラフロイグcairdeasがあった。かなり揮発性の高いバター臭ではじまる、羽毛のようにかろやかなラフロイグは、空気にふれると、時の経過とともに荒々しい潮の香となり、最後はピリッとスパイシーに、あくまで重々しく華やぐ。老若が並存しているような、銘酒だと思う。マスターいわく、「怪物級のラフロイグ」。
     つぎもシングル・モルトの名品「ザ・ソープ」をいただき、モヒートをおかわり。最後は濃厚ながらすっきりとしたマンゴーのカクテルで〆。

    これから、「一風堂本店」へ乗りこむという若武者たちとわかれて、ぼくは木屋町の旅籠に帰る。つもりが、先斗町「みつ喜」で呑んでいるという旅籠の主人と合流。ふたりで近江牛ステーキを一枚ずつ食べてしまった。

    翌朝は神戸。仕事が終わると、スキマ時間があったので、タクシーで前から気になっていた骨董屋へ。店内には15分ほどしかいれなかったが、ちょっと見たことのない16世紀のオランダ盃を入手。旅先で、これから長くつかえそうな春の酒器にめぐりあった。

2016年4月21日木曜日

『星座』にローライ同盟登場



    本ブログでも紹介した、詩人の吉増剛造さんを中心に集った、「ローライ同盟」。詩歌雑誌『星座』77号に、写真家の小野田桂子さんのペンと写真によるエッセイが掲載された。写真は、小野田さんがデジカメで撮影した作品。掲載誌も拙宅にわざわざ送ってくださった。

    右から、映画や資生堂コマーシャルで知られる井上春生監督、城戸さんにつづき、メガネとベレーで煙草をくわえて写っているのが、ぼく 笑 光栄なことです。

    書店で見かけたら、ぜひ、一部お買い上げを。

    熊本市の仕事先の友人から返信メールがきていた。さいわい、おおきな被害はなかったそうで、胸をなでおろす。都内の仕事仲間とも、ささやかな義援金と物資を募り、友人を窓口に送ることにした。
    そういえば、いつもくまモンのネクタイをしている詩人の広瀬大志さんは、熊本のご出身。どうされているだろうか。

     昨日、仕事帰りに浦和駅で下車すると、東口で共産党が、西口で自民党が熊本市義援金の募金合戦をしている。双方、スピーカーつき車両でくりだし、党旗をかかげ、大音声で。まるで、選挙みたいだ。

    西口の共産党の募金箱に女子高生たちが義援金をいれて、原発反対の署名もしていた。なけなしのお小遣いだろうに。ぼくも、レディたちにならう。

    一日も早く、余震が落ち着いてほしい。

2016年4月18日月曜日

5/14は『地形と気象』刊行記念イベントへ!




   都内で仕事のないときは、自宅から事務所まで歩いてかよう。早朝。まだ車も人通りもない田園の道は、諸生物の世界。
   午前七時、すこし春の雨がぱらついていて、ぼくの地形と気象の伴侶には、迷惑そうにがあがあ鳴く、一羽の鴨がアスファルトのうえを歩いていて。

    左右社ホームページで連載していた、詩人の暁方ミセイさん、大崎清夏さん、管啓次郎さんとの定型共同詩『地形と気象』が、この春、いよいよ一冊の詩集として刊行されます。

    その刊行記念もかねて、『地形と気象』がきたる5/14土曜日にイベント化!港大尋さんのプロデュースで、「学園坂スタジオ」にて開催されます。
    詳細は、下記のリンクからご覧ください。


    Jeffry Johnsonさんの英訳もついています。イベントについては、また本ブログで告知もします。左右社さんならではのシャープかつ洒脱な装幀の共同詩集も、できあがり次第、お披露目しますね。

    当日は詩人全員でサインもします。ぜひ、ご来場ください!

2016年4月15日金曜日

東洋大学で講義



   まず、地震で被害にあわれた熊本のみなさんにお見舞い申し上げます。

   東洋大学で講義がはじまり、白山に週一でかようことに。大学院での講義は、こちらの事情もあり、今年の前期で終了。学生のみなさん、夏までよろしくお願いします。

    東洋大学というと、ぼくにとっては、作家の坂口安吾の母校というイメージがある。でも、安吾の時代から七十年がたった現在。はじめて訪れたときは、凱旋門のような威容におどろいた。

    学生さんは他大学からの受講生もおおく、アメリカからの留学生もいる。村上春樹に憧れていたが、いまは谷崎潤一郎を専攻しているのだとか。去年の学生さんも二名、聴講しにきてくださった。
    今期、ぼくが教えるのは、荒地派をふくむいわゆる戦後詩の詩人たち。

    安吾が仏教と梵語、サンスクリット語を学んだ白山は、もともと寺町。浄土系、大谷派、日蓮宗のお寺がおおい。講義のあと、ぼくはせまい路地を散策するのが好き。「駒込土物店跡」というのも見つけた。江戸期にはお寺の敷地に市がたったという。そんな江戸情緒も感じられて、たのしい。

    下町らしく、喫茶店もおおいですね。江田珈琲店でおいしいコーヒーを飲む。それから、コンビニでヱビスビールとちいさな商店街の肉屋さんでハムカツを買い、公園の葉桜のしたでぐびぐび呑む。風はちょっとあるけれど、のどかな春の夕暮れ。

    よさそうな居酒屋を知らないので、学生さんに、どこかいいとこ、知ってます?とたずねると「鶏の穴」というシュールなラーメンやを教わった。帰りに、寄ってみようかな。

    どこかのお寺で、また鐘が鳴って。

2016年4月13日水曜日

散文的な日々


   今週は書評やながめの論考の執筆、書きおろしの本、大学の春学期もはじまり、散文の日々。

   今朝も早おきし、大学に出講するまでのひととき、銀軸のボールペンでフランスで買った方眼罫ノートに執筆していた。

   そんなわけで、執筆に集中するためブログを今週末までお休みします。

    また、ぜひ、おつきあいください。   

2016年4月8日金曜日

テレビ番組「H」(アッシュ)〜京都撮影二日目




    スカパー!チャンネルで放映予定のテレビ番組「H」。京都ミシュランガイドで星を獲得した「ごだん宮ざわ」さんを、詩人のぼくと翻訳家の石田みゆがたずね、京料理をいただくという趣向なのだが、いよいよ撮影がはじまった。

    お昼に、ごだんさんに集合。すでに、撮影クルーは現場入りし、料理長の宮澤政人さんとスタッフのみなさんも朝七時ごろからお店で仕込みと準備をされていた。

    すぐに撮影開始。詳細はここで語らないけれど、さまざまな雅陶の本歌、現代の名工の作品に盛られた宮澤さんの、あでやかで、おいしい京料理に饗応され、撮影もわすれてぼくはごきげんに。盃をあげ、箸をとり、そうこうしているうち、あっというまに二時間半がすぎる。

    食事シーンの撮影終了後、宮澤さんがおっしゃった言葉が印象にのこった。「全員が一丸となって、ひとつのものをつくる。いいですね」。

    前日は流響院撮影とお店の営業、閉店後はメニューを練りなおし、仕込みをされたのだろうから、宮澤さんもお店の料理人のみなさんも、ほとんど寝ていないのではないか。
    それでも、いやな顔ひとつせず、気持ちも乱さず、撮影をやりとげられたのだから、宮澤さんはじめ「ごだん宮ざわ」のみなさんには感服した。もちろん、番組制作・撮影陣のみなさんにも。

     ぼくらの撮影がおわると、記念撮影。この後、ごだんさんと撮影クルーはブツ撮りにはいる。宮澤さんは、撮影につかった器がブツ撮りされていくのをモニターで確認しながら、子どものように目をきらきらさせ、じつにうれしそうな顔をされていた。料理も器も、ほんとうにお好きなんだなぁ。

    以下、感謝と敬意をこめて、出演者各位、番組制作・撮影クルーのお名前を書かせていただきます。

料理長・宮澤政人さん
「ごだん宮ざわ」のみなさま

番組監修者の城戸朱理さん、小野田桂子さん、井上春生監督

赤塚ディレクター、安田キャメラマン、音声の中村さん、ヘアメイクの竹下さん、照明・撮影クルーのみなさま

フランス語翻訳家・石田みゆ

ほんとうにお世話になりました!

2016年4月6日水曜日

京都のビフカツ


   京都撮影の昼食で、「グリル葵」につれていっていただく。お目当は、そう、この「ビーフ・カツレット」なり。ミシュランガイド京都2016ビブグルマンでえらばれたお店。まぁ、それはともかく。

    ふだん、家では四つ脚が食卓にのぼることはすくない。とくに、牛肉は。妻が近年、牛肉を食べるとアレルギー気味になり、年齢のせいか、ぼくもあまり食指がうごかなくなっているのだ。それでも、ときどき、食べたくなる。和食がつづく京都では、なおさら。

     京都、というか、関西ではカツといえばビフカツ。グリル葵のデミグラスソースは、かなりさらっとしている。ご飯にあうようにつくられているのだとか。肉は厚切り、焼き方はレアにちかいミディアム。おいしかったです。

    二十代後半のとき、仕事で京都に五十数連泊した。そのときに通ったのが、西陣の洋食や「キッチン・ゴン」。葵さんみたいにゴージャスではないけれど(失礼!)、当時、ビフカツは関東ではめずらしくて、よく食べました。あそこの「ピネライス」、また食べたいなぁ。ピネライスとは、特製チャーハンのうえにうすいビフカツとカレーがかかった一品 笑。安くて、お腹にたまって、もちろん京都の学生さんは知ってるよね?若いころは、呑んだあとも、ピネライス、いけたんだけれど。

    それで思いだしたけれど、倉敷の児島に「イーハトーブ」さん、ていうカレーやさんがありますよね。スパイスは自家製の調合、さらっとしたカレー・ルーがかかり、ライスのうえにスパイスで炒めたひき肉、カット・トマト。カレーなんだけれど、妙にフルーティで。呑んだあと、断然、いけるんです。

    ひとの来し方に、安くて、おいしい、洋食やさんあり。以上。

2016年4月4日月曜日

テレビ番組「H」(アッシュ)〜京都撮影初日




   スカパー!チャンネルのテレビ番組「H」(アッシュ)に出演することになりました。その、京都での撮影初日。

    フランス語翻訳家で妻の石田みゆと11時に京都駅着。八条口で、番組をプロデュースする小野田桂子さんが出迎えてくださる。
    エグゼクティブ・プロデューサーの城戸朱理さんと小野田さんは、ぼくらの撮影の直前に、すでに歌人の水原紫苑さんの番組撮影を終えていたという。おふたりはそのまま京都にのこり、今回の撮影にはいるというのだ。

    井上春生監督の運転する車で南禅寺ちかくの真澄寺別院流響院へ(上写真は、撮影後になんとかおさめた庭園入口)。現場で、赤塚ディレクター、安田キャメラマン、音声の中村さんとご挨拶。持参したポール・スミスのスーツにきがえて、さっそく撮影にはいる。流響院については、こちらのリンクをご参照ください。


    松の新緑が芽吹く春の庭園を妻とそぞろ歩き、川端康成が『古都』を執筆したという観月の間でしばし端座。『古都』冒頭の梅、下覗するように、東山と松のラインのかさなりを眺めてみたり。

     16時。今回の番組の主役、京都ミシュランで星を獲得した「ごだん宮ざわ」のご亭主にして料理長の宮澤政人さんが現場入り。ダーク・グリーンのタータン・チェック2Bジャケットがきまっている。妻もヘアメイクさんも「役者顔だわぁ」を連発。縁側に三人ですわり、夕闇がせまるなか、対話シーンの撮影。

    撮影終了後、宮澤さんは、そのままお店へ。ぼくと妻は、糸やホテルでチェックイン。夜は、城戸さん、小野田さん、赤塚ディレクター、安田キャメラマン、ぼくと妻で「ごだん宮ざわ」さんへ。乾杯。妻は、宮ざわさんにゆくのははじめて。

    下写真のお料理。明末の赤絵皿に、京都の春の風物詩、しらこたけのこ。うえにのっているのは、はなさんしょう、ほたるいかのたたき。
     
    赤塚さん、安田さんとは初対面のぼくら。その夜は、城戸さんと小野田さんのおはからいで、たのしく親交をふかめることができた。仕事できているはずが、ぼくは完全にリラックスしてしまう。頰がおちそうな京料理と酒に、舌鼓をうちまくってしまった。小野田さん、「石田さん、あしたも撮影だよ!」。

    そのころ、井上監督は別行動で焼肉屋。そちらもたのしそうで、さらに、すごいと噂のスコッチバー「アイラ・モヒート」から電話をしてくださる。
    その晩は、後髪ひかれる思いで、ホテルへ。家から持参した竹鶴の21年を寝酒に、満腹のまま、就眠。夢も見なかった。

2016年4月2日土曜日

見沼の桜回廊





    京都撮影から帰宅すると、見沼の桜回廊が八分咲き。
    妻と半日かけて、桜のトンネルをくぐって、そぞろ歩いた。

    弥生時代までは浅瀬だったともいわれる広大な見沼を新田開発したのが、八代将軍吉宗。いまでも見沼は東岸と西岸(東縁、西縁)にわかれていて、両岸にわたり全長20kmにおよぶ桜並木が環状につづいている。この桜回廊を一周するには、徒歩だと、丸一日はかかるだろう。

    ぼくの自宅は、この桜回廊から歩いて数分。写真のように、今年は花曇のお花見だった。それでも、自宅から女神を御神体にまつる女氷川神社まで散歩して、桜、桜、桜。桜のシャワーを存分にあびることができた。ちなみに、武蔵一宮の氷川神社が須佐男を、女氷川神社は櫛名田比売をおまつりしている。

    妻とともに、京都での撮影が無事に終了したことを、見沼の龍神と櫛名田比売におまいりして、感謝をささげた。
     今年もまた、見沼の桜と再会できたことにも。