2015年1月9日金曜日

温泉とラーメン

   

   年末から無休で、半休がとれた日。さいたま市から近い春日部に行った。以前も書いたかもだけど、この日光街道ぞいの街は、かつては問屋街で、粕壁、つまり蔵の白壁が軒を連ねた。俳人、石田波郷が住んだ街。いまではアニメの聖地で有名かも。
   ここに天然掛け流し温泉があって、ときどき入りにくる。天気のいい日、駅から歩きながら芦が茂って風情のある古利根川をわたる。煙草を吸いながら、青鷺や鷭といった水鳥を眺め、鶸の可愛らしい声に耳をすます。
   温泉と昼寝がおわると、ぼくが向かうのは、ラーメン屋の「豊」さん。自家製餃子とビール、手作りの大根の酢漬け、ハイボールを何杯かもらい、〆は「中華そば」。呑む人はあまり見かけない。ラーメン誌にもたびたび登場しているので、食べ専のコアなファンも多いかも。以前は、八海山がおいてあり、しかも400円ぐらいだった。
   ゆたかさんのラーメンは、埼玉の地粉ハナマンテンをつかった自家製麺。春日部は昔から製麺所の多い、うどんの街でもある。マスターいわく、麺はラーメンの種類ごとに調合や太さを変えるのだそう。澄んだ魚介系のスープは天然だしにこだわり、豚、鶏ガラのほか、にぼし、昆布、鰹、するめ、貝柱などでとるみたいだ。いつもは醤油スープの中華そばしか食べないけど、今回食べたのは、新作の「鶏白湯」。柚子胡椒、レモンをかけて食べる。チコリやアボカドも入った変り種だけど、うまかったです。
   都内の某有名中華レストランで修業してきたマスターだから、おつまみもラーメンもセンスがいい。中華特有のぎとぎと感がなくて、やさしい味わいだ。明るいジャズがかかっているのも好きです。
    20代の前半、田村隆一がひととき暮らした東京の保谷の近くに住んでいた。その頃、田村さんのエッセイで、銭湯、貸本屋、ラーメンという黄金の詩人コースを読み、ぼくもマネしたのだ。ぼくの町にも当時、貸本屋があり、古びた店内の梁には猫がズラリ。鈴生りになって客を見下ろしたり、書架から書架へ渡り歩いていたっけ。
   温泉と、大人のラーメン屋の休日、どうですか?

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