2015年7月20日月曜日

鎌倉で人力車にのる





    みなさん、連休、いかがお過ごしですか?ぼくは今日、切なくも、原稿中。かわりに、このあいだいった鎌倉の話をひとつ。
   招待してもらい、鎌倉で人力車にのせてもらった。俥夫は「えびす屋」のカナメさん。人力車にのるのは、生まれてから2回目。仕事で倉敷を訪れて以来。当日の気温は32度ちかく。俥夫のカナメさんはまっくろに日焼けして、さすがひきしまった体をしている。午後3時からのせてもらったのだが、休日ということで、予約でいっぱいだった。
    ベテランのカナメさんは器用にすいすい鎌倉の路地を走ってゆく。20年以上、鎌倉に通っているけれど、見知った路地をすこし高い視座から車で走るのはとても新鮮だった。風がきもちいい。ぼくらは、寿福寺から妙本寺へ、滑川の琴弾橋をカナメさんのガイドをききながら走る。3番目の写真は滑川の琴弾橋うえから。カナメさんのガイドによれば、、この川には相模湾から風がよく吹きこむんです。すると、川辺の樹々の葉が鳴って。むかしのひとはそれを琴の音色になぞらえたんですね、、。
   ハイティーンのころ、ぼくは詩人田村隆一の『ワインレッドの夏至』を片手に、「名前を六回変えながら/鎌倉の町を貫流する」滑川を海まで歩いたことがあった。詩篇「滑川哀歌」ではそこに、レデンプトリスチン修道院のシスターたちが焼く、「風にはクッキーの匂いがまじっている」はずで、ぼくはその匂いをさがしながら歩いたっけ。
  「ぼくの下駄の音がひびくばかり」。散歩する田村さんの面影を瞼の裏に浮かべながら、車上から鼻腔をすましてみる。
   修行がたりないのか、当時もいまも、まだクッキーの匂いを嗅いでいない。

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