2016年3月15日火曜日

朝日新聞に詩が掲載


    本日3月15日の朝日新聞夕刊「あるきだす言葉たち」欄に、新作詩「Lune Et Calvados」が掲載されました。
    ぜひお手にとってお読みください。

    この詩は、いま書きすすめている連作詩「Asian Dream」の一篇。今作は、東日本大震災から五年が経過した被災地にささげる詩にもなっています。

    連作詩は、1991年から滞在したアメリカが舞台になっている。毎回、詩作品のタイトルを、当時ぼくがきいたり、関連のある曲からかりている。詩とジャズ、アメリカの記憶と現在の世界を交差させるこころみです。
     91、2年のアメリカ、カリフォルニア州は、いまの国際テロの発端となった湾岸戦争へと突入。ネオナチの復興、白人警官に射殺されたアフリカ系アメリカ人、ロドニー・キング事件への無罪判決など、人種差別を火口に炎上したロサンゼルス暴動といった、いまの世界状況につながる不穏な事件や問題がたてつづけにおこっていた。
    また、その年は、サンフランシスコ震災の翌々年でもある。シスコの対岸にある黒人街、ぼくが暮らしたオークランドのいたるところにも、その傷痕が生々しくのこっていたのだった。

   「Lune Et Calvados」は、日本ジャズ界のトップ・トランペッターのひとり、五十嵐一生さんのオリジナル・ナンバー。96年の4thアルバム『Tokyo Moon』の一曲目で、ほんとうに美しいバラードです。動画のリンクをはらせていただきました。


    北海道の紋別市に生まれ、北見に育った五十嵐さんは、東日本大震災被災地への支援も、ライブ活動をはじめ積極的にされている。ぼくは、アメリカから帰国し、日本の高校を卒業したものの大学には進学せず、フリーで広告や雑誌のライターをしていた。
    そのとき、『Deep Blue Rain/Issey Igarashi』でソロアルバムデビューをはたし、オープンしたてのコットンクラブ・トーキョーに出演して、鮮烈に登場したのが五十嵐さんだったのだ。現場にいあわせたぼくは、もし、日本にマイルス・デイヴィスがいるとすれば、こんなトランペッターではなかろうかと思ったものだ。そんな音と才能のかがやきをはなつミュージシャンだった。
    それから、ぼくは何度も、五十嵐さんのライブに通う。97年に発表されたリーダー・アルバム『Summer's Almost Gone』の紹介記事を雑誌に書いたこともある。90年代後半から断続的に沈黙されていたが、近年は、ライブもさることながら、あたらしい動画をアップされるなど、いよいよ磨きがかかり、健在ぶりをしめされている。
    ふたたび生で、五十嵐一生の音をじっくり味わいたいし、なにより、ニューアルバムのリリースをこころまちにしています。

    自分の詩の話が、五十嵐一生ファンからの、エールになってしまった。

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